掲載誌『新潮』8月号を完売させ、単行本の発売前から大きな話題を呼んだ沢木耕太郎さんのノンフィクション『天路の旅人』が、1月10日(火)にNHK「クローズアップ現代」で紹介された。
めったにテレビに出演しない沢木さんの貴重なインタビュー映像は、放送中から「沢木耕太郎さん」がトレンド入りするなど大きな反響に。
放送を受け、『天路の旅人』はリアル書店、ネット書店共に売り切れが続出し、重版が決定した。気になるその内容について紹介したい。
第二次世界末期、密偵として生きた西川一三氏の旅を書く
第二次大戦末期、敵国・中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した日本人・西川一三氏。敗戦後もラマ僧に扮し、果てしない旅を続けた彼に、沢木さんは激しく共鳴した。
「この希有な旅人のことを、どうしても書きたい」と、25年の歳月をかけて結実させた本作は、沢木耕太郎さん史上最長編にして、「旅」の真髄に迫る傑作ノンフィクションだ。
沢木さんは本書の「あとがき」で、以下のように記している。
「彼、西川一三の旅も長かったが、その彼を描こうとする私の旅も長かった。彼に会ったのを発端とし、書き上がったときを終結とすれば、発端から終結まで二十五年かかったことになる。
西川一三氏を書く。
しかし、その彼が自らの旅について記した『秘境西域八年の潜行』という書物がありながら、あえて彼の旅を描こうとするのはなぜなのか。
私は、何度も、そう自問した。
そして、やがて、こう思うようになった。私が描きたいのは、西川一三氏の旅そのものではなく、その旅をした西川一三氏という希有な旅人なのだ、と」
日本を代表するノンフィクション作家・沢木耕太郎さん
沢木耕太郎さんは、1947年に東京で生まれた作家。横浜国立大学卒業後、ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集めた。
1979年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、82年『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞。その後も『深夜特急』『檀』など今も読み継がれる名作を発表し、2006年『凍』で講談社ノンフィクション賞、13年『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞する。長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』、国内旅エッセイ集『旅のつばくろ』『飛び立つ季節 旅のつばくろ』など、その著書は数多い。
彼の最新作『天路の旅人』は、576頁と分厚い本にもかかわらず、「読み出したら一気呵成、止まらない」「不思議なくらい『深夜特急』と重なり合うシーンが出てきて、思わずハッとする」「圧倒的な力。これほどまっすぐ『旅人』を描いた作品はないかも」など、数々の興奮の感想があがっている。
数々の人々を魅了してやまないノンフィクション作。話題の一冊は、ビジネスシーンにおける会話のタネにもなりそうだ。
天路の旅人
著者:沢木耕太郎
造本:四六判ハードカバー
定価:2640円(税込)
書籍ページ:https://www.shinchosha.co.jp/book/327523/
(IKKI)