苦境の鉄道業界に「トレインワーケーション」が導く新体験と可能性とは

コロナ禍により苦境に陥った鉄道業界の救世主となるのか?
「トレインワーケーション」の可能性についての実証実験が行われた。

■観光列車の持つ個性豊かな空間をワークスペースに

長野県千曲市の「ふろしきや」と、千曲市、信州千曲観光局、長野県、しなの鉄道が提携して、2021年2月24日~26日に開催した「千曲市ワーケーション体験会」の模様をレポートする。

1日目は、しなの鉄道「ろくもん」を貸し切り、観光列車の持つ個性豊かな空間をワークスペースとして利用できる「トレインワーケーション」を実施。

県内外から30名程の参加者が集い、集中作業・個室を使ったウェブ会議・参加者同士のコミュニケーションを楽しむなど、列車から望む景色と美食を楽しみながら、それぞれのワーケーションを満喫。

「移動自体が特別な体験になっているので、そこで仕事をするだけでリフレッシュを伴うワーケーションが実現できています」と参加者が言うように、働き方ニューノーマルの時代に鉄道資源の活用は新たな市場を生む可能性を秘めている。

多くの観光列車は、食事を提供するなどのために比較的大きなテーブルが備え付けられていることが多くワークスペースとして有効だ。

「ろくもん」のように、「個室スペース」「カフェと展望スペース」「オープンスペース」など車内のデザインも多様になっており、働くスタイルに合わせて、スペースを選ぶことも可能であり、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)との親和性が高いことが、ほかの移動体によるワーケーション体験と比較しても観光列車の有利な点となっている。

■鉄道会社の遊休資産を有効活用する

全国各地で運行される観光列車は、それぞれに個性を持ち、地域色を反映した内装デザイン、地域文化との連携による車内・停車駅によるイベント、車内で提供される食事、大きな窓や車窓に対面する座席による眺望など独自の取り組みを進められている。

しかし、基本的に観光客に向けて週末・祝日を中心の運行なので、鉄道会社が投資して導入した貴重な資産の活用は半分程度となっている。

トレインワーケーションは、ユーザーにとって利点が多いだけでなく、平日に鉄道会社の資産を有効活用するという面から鉄道会社にとっても大きな利点がある。

また沿線の観光地との連携を図ることで、休憩時間にあわせて沿線の特産品を提供することで、その地域の魅力を参加者にアピールすることも可能となる。

2日め、最終日は別な形でのワーケーションを実践、参加者や関わった地元の人たちにも好評だったようだ。

「千曲市ワーケーション体験会」次回は、話題のゼロ・カーボンといった社会的関心の高い話題や、地域の文化・暮らしの体感といった信州の資源を活用しながら学びと体感できる「ワーケーション・ウェルカムデイズ」を5月22日(土)〜5月29日(土)に開催予定。

ニューノーマルな働き方を、積極的に取り入れていくことが必要な時代なのかもしれない。

ふろしきや:http://furoshiki-ya.co.jp 

(冨田格)