アートな場所に生まれ変わった、台湾・高雄の貨物線レール跡

台湾といえば、今でも有名な「台湾バナナ」やサトウキビ。それらを出荷していた頃の名残が、高雄の港近くにある。

高雄港の真横に広がる広大な緑の土地。そこに古いレールが何本も横たわっていた。ここがかつて貨物列車が着き、荷揚げや荷下ろしをして港からバナナなどを輸出していた引き込み線である。

その当時使用されていたと思われる、転轍器や車止めがそのまま残されていた。歴史と哀愁を感じさせる姿に、しばし立ち止まる。

しかしこの広大な引き込み線跡、ただそのまま放置しているのではない。

ところどころ、レールの間にオブジェが配置されている。鉄道の部品を使って作られた巨大な旅行用スーツケース、楽器などが据えられ、観光客たちが楽しく撮影をしている。ここは広大なアートスペースに生まれ変わったのだ。

夜間はレールに沿ってLEDが点灯し、幻想的な世界も見られる。

また、台湾鉄道がかつて使っていた駅舎(現在は改修工事中)も残されており、「打狗鉄道故事館」という展示室となっている。

ちなみに高雄はかつて「打狗」と表記されていたが、日本によって「高雄」と改められたのだそうだ。そのため所々で「打狗」の表記を目にする。

ここにはレールだけでなく、当時使用されていた列車や機関車も展示されていた。

古い駅舎の隣には、トラムの終着駅がある。この高雄港近くを出発し、旧市街を通って愛河の上を渡り、新市街の巨大なタワー「高雄85大楼」方面へと走る。

とても新しくて快適であるのと、窓が大きくて景色がゆっくりと眺められるのでオススメ。愛河の上にある駅で降りれば、川の両側に広がる美しい夜景も見られる。

古いものを大切にしながら、新しいものをどんどん取り入れる。そんな高雄の素敵な取り組みを見た気がした。

(田原昌)