南仏の巨大な港町、マルセイユはひっきりなしに船舶が行き交い、港や石造りの要塞からその様子を眺めているだけでも楽しい。
しかし、せっかくだから船に乗って港を出てみたいという人は、是非遊覧船に乗って出かけてみよう。
マルセイユの旧港には、遊覧船が出る船着場が2箇所ある。前日か朝一に出発時間などを確認しておこう。
しかし、訪ねて行くと「今日は天気はいいが風が強いので欠航」と、片方の案内所で言われてしまった。確かに、地形のおかげで波が消されている旧港を見ているだけでは気がつかないが、外海を見ると波が立っている。残念な事にならないように、旅行中は余裕を持って計画しておきたい。
今回はもう一方の遊覧船が1便だけ出るということになったので、無事に乗船。いざ、マルセイユの旧港を出発、目指すは「Ile d’ If(イフ島)」!
旧港を出発すると、右手に見えてくるのが「Fort St-Jean(サン・ジャン要塞)」。
昔の日本人も、船に乗って何ヶ月も海を越え、この要塞を通ってマルセイユに到着、ここからヨーロッパを巡ったという。そんな歴史を思いながら、外海へと出る。
地中海に出ると、確かに波が高い。船長は速度を上げ、波を蹴るようにして走り出した。
やがて見えてくるイフ島(Château d’Ifとも)。まさに要塞らしい形をしている。
ここはもともと要塞として16世紀に築かれ、やがて牢獄として使われた。その牢獄を舞台にして書かれた小説が、アレクサンドル・デュマ・ペールの『モンテ・クリスト伯』別名『巌窟王』だ。
船はイフ島を過ぎて、隣のフリウル島を通りながらぐるりと一周。草木があまり生えていない、寂しそうなイフ島はまさに牢獄の様相である。
今回は波が高かったのでぐるりと島を一周するコースだったが、イフ島に上陸できるコースもある。
『モンテ・クリスト伯』を読んでから、実際にどのような場所なのかを見に行く楽しみも味わえそうだ。
(田原昌)