坂本龍一さんが自らの活動から闘病までを綴った『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』6月21日発売

2023年3月28日(火)、稀代の音楽家、坂本龍一さんが逝去した。ミュージシャンであるだけでなく、自らのメッセージを力強く発信する表現者としての顔も印象深い。

亡くなる直前まで続いていた雑誌『新潮』の連載をまとめた『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』が、6月21日(水)に発売される。闘病の様子を交えつつ、2009年以降の活動を自らの言葉で振り返った自伝だ。

Photo by Zakkubalan 🄫Kab Inc.

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坂本さんが企画した『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』

『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』は、新潮社の『新潮』22年7月号から23年2月号まで掲載された。

先に文庫化された『音楽は自由にする』を継ぐものとして、死期を悟った坂本さんサイドからの提案で始まった企画でもあるという。

音楽制作から舞台芸術への参加、政治的発言まで多岐にわたる活動を支えてきた坂本さんの哲学、そして吉永小百合さんやBTS・SUGAさんをはじめとする著名人との交流など、盟友の鈴木正文さんを聞き手に、ここでしか読めないエピソードを多数披露した。

多彩な顔をもつアーティスト・坂本龍一さん

1952年、東京に生まれた坂本さんは、東京藝術大学大学院修士課程を経て1978年に『千のナイフ』でソロデビューする。

同年、音楽グループYMOの結成に参加。日本の音楽史に数々の名曲を残す。1983年に散開後も『音楽図鑑』『BEAUTY』『async』『12』などを発表し、革新的なサウンドを追求し続けた。

映画音楽では『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞音楽賞、『ラストエンペラー』でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞をはじめ多数受賞。世界的映画音楽家としての顔をもつ。

『LIFE』『TIME』といった舞台作品や、韓国や中国での大規模インスタレーション展示など、アート界への越境も積極的に行なった。

なにより印象深いのは、環境や平和問題への意見表明を力強く続けてきたことだ。森林保全団体「more trees」を創設したほか、「東北ユースオーケストラ」を設立して被災地の子どもたちの音楽活動を支援した。

ファンのなかには、その音楽性だけでなく、坂本さんの哲学や人生観に惹かれたという人も多いだろう。坂本さんが連載開始時、連載完結時に寄せたというコメントを記載したい。

連載開始時の坂本龍一さんのコメント

「夏目漱石が胃潰瘍で亡くなったのは、彼が49歳のときでした。それと比べたら、仮に最初にガンが見つかった2014年に62歳で死んでいたとしても、ぼくは十分に長生きしたことになる。新たなガンに罹患し、70歳を迎えた今、この先の人生であと何回、満月を見られるかわからないと思いながらも、せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています。

そして、残された時間のなかで、『音楽は自由にする』の続きを書くように、自分の人生を改めて振り返っておこうという気持ちになりました。幸いぼくには、最高の聞き手である鈴木正文さんがいます。鈴木さんを相手に話をしていると楽しくて、病気のことなど忘れ、あっという間に時間が経ってしまう。皆さんにも、ぼくたちのささやかな対話に耳を傾けていただけたら嬉しいです」

連載完結時の坂本龍一さんのコメント

「2020年の末、自らに残された時間を悟ったぼくは、生きているうちにしておかなくてはいけないことをリストアップしました。そのひとつが、『音楽は自由にする』以降の活動を自分の言葉でまとめておくことでした。

少々慌ただしいスケジュールだったけれど、聞き手の鈴木正文さんにも助けられながら、間もなくリリースされる『12』までの足跡を振り返ることができ、今はホッとしています。連載は完結しますが、もちろんこの先も命が続く限り、新たな音楽を作り続けていくつもりです」

坂本さんの生き様にありありと触れる一冊

本書の発売まであと少し。新潮社では目下、刊行準備を進めているという。価格は2,090円(税込)を予定する。偉大な音楽家を失った喪失感は容易には癒えないが、坂本さんの生き様に触れる一冊になるだろう。

ぼくはあと何回、満月を見るだろう
定価:2,090円(税込)
著者:坂本龍一
発売日:6月21日(水)
判型:四六判
ISBN:978-4-10-410603-5

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000989.000047877.html

(SAYA)