ジェンダーによる偏見をRPGで表現した現代アーティスト藤嶋咲子氏の個展が9s Galleryにて開催

西麻布のアートギャラリー「9s Gallery」にて、藤嶋咲子氏の個展「WRONG HERO」を、10月19日(土)から10月27日(日)までの期間に開催する。

SNSで集めたジェンダーによる偏見を受けた人々の声を集め、ドット絵が懐かしいレトロなRPGゲームで表現。ジェンダーによって社会で押し付けられた役割に縛られ、生きづらさを感じる人々の姿を浮き彫りにする。

バーチャルデモを発表し大きな絵画の制作だが、最近ではSNSを介したインタラクティブなデジタル作品の制作にも積極的に取り組んでい話題を呼んだ

藤嶋咲子氏は、アナログとデジタル、2Dと3D、現実と仮想現実とを行き来しながら実験的な作品を制作するアーティスト。

2020年に、SNS上で参加者を募りバーチャル空間でデモを実施する作品「バーチャルデモ」の発表をきっかけに、SNSに流れる「個人の声」を掬い上げる作品群を制作。

「バーチャルデモ」は、新型コロナウイルスの対策として行われたロックダウン時に発表。SNSの投稿へのリポスト数を参加者とみなし、その人数分のアバターをバーチャル国会議事堂に配置し、その様子をSNSに投稿するというもの。コロナ禍で外出や集合がままならない中、バーチャルデモは、個人の小さな声を一つのシュプレヒコールに束ね、遠くに届ける試みとして注目を集めた。

同氏の元には、SNS経由でデモに対する数千数万のコメントが寄せられた。それらを「バーチャルデモ」では、生々しい声をそのままの形で集積。日常では伝えにくい、人それぞれの思いを同氏は丁寧に掬い上げ、可視化する。現在もメタバース上で精力的に活動中だ。

人気のレトロRPGゲームで表現した新作

今回の新作「WRONG HERO」は、タイムラインにテキストとして埋没していく個人の声を、テキストだけではないカタチでの体験をコンセプトに、実際にコントローラーを操作するビデオゲーム形式によるインタラクティブな作品だ。

「WRONG HERO」の主人公は女性だ。プレイヤーは彼女を通してNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と交流し、ジェンダーによる偏見をもった様々な言葉を投げかけられる。NPCの言動は、藤嶋氏がSNSで集めたジェンダーによる偏見を受けた人々の声だ。

さらに同展では、プレイヤー自身が自分の言葉でNPCと対話できる作品も展示。「WRONG HERO」に登場したドット絵のNPCが、リアリスティックな姿でモニターに表示され、生成AIを用いてプレイヤーに応答するという。

「WRONG HERO」は、9s Galleryにとっては初のメディアアートを主体にした展覧会だ。アートは「分からない」。だから、アートに参加することは、「分からない」ということを「分かる」営みでもある。そしてそれは、完全には互いを理解しえない私たちの壁を越える、おそらくは唯一のきっかけとなるであろう。

藤嶋咲子個展「WRONG HERO」
会期:10月19日(土)~10月27日(日)※休館日は10月21日(月)
時間:12時〜 19時
オープニングパーティー:10月19日(土)
時間:16時~18時
会場:9s Gallery by TRiCERA
所在地:東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F
公式サイト:https://www.tokyoartbeat.com/venues/-/9s-gallery-by-tricera

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000043089.html

(高野晃彰)