卓越した描画技術をもつ画家の代表作から最新作までを網羅した一冊が登場。
2月26日(日)まで府中市美術館で開催する画家・諏訪敦氏の個展「眼窩裏の火事」に合わせて、同氏の最新作品集『眼窩裏の火事』が美術出版社から1月23日(月)に刊行される。
写実絵画のトップランナー、画家・諏訪敦氏
対象に迫る精緻な描写で知られ、写実絵画のトップランナーとも言える画家・諏訪敦氏。
代表作『棄民』は、NHKのETV特集にて、制作プロセスに密着取材した様子が放映され、その対象をリサーチする徹底した姿勢が大きな反響を呼んで、全国的に知られる作家になった。現在は武蔵野美術大学教授を務め、根強いファンの多い人気作家のひとりだ。
最新作品集『眼窩裏の火事』には、代表作『棄民』シリーズをはじめ、コロナ禍のなかで制作された静物画、2022年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したダンサーの川口隆夫氏をモデルに描いた新作『Mimesis』、そして『Sphinx』など、約70点に及ぶ豊富な作品ビジュアルが掲載されている。
さらに、作家本人のエッセイ、展覧会企画者の府中市美術館の鎌田享氏による総論と詳細な作品解説により、これまでの諏訪氏の作品を詳しく分析。また、写真家の鈴木理策氏、早稲田大学教授の山本聡美氏、國學院大学教授の小池寿子氏らによる書き下ろし論考により、「視ること・描くこと」という行為の意味を問い、誠実に挑み続ける画家の真髄に迫る。
第1章 棄民
終戦直後の満州で病死した祖母をテーマとした「HARBIN 1945 WINTER」など、画家の祖先の姿を描いた作品群を紹介。山本聡美氏による論考では、九相図や六道絵を通して戦火を描いた美術の歴史を振り返りながら、諏訪氏の作品がもつ凄みについて分析する。
第2章 静物画について
コロナ禍のさなか、諏訪氏は猿山修氏と森岡督行氏の3人で「藝術探検隊」というユニットを結成。写実絵画の歴史について議論を交わしながら静物画の制作に取り組んだ。
本章では、国立西洋美術館の渡辺晋輔氏との対話、写真家の鈴木理策氏によるエッセイを収録。諏訪氏の緻密な描写に込められた日本美術史における西洋画への眼差しや、絵画を描くための「視る」という行為をめぐる画家の思考に迫る。
第3章 わたしたちはふたたびであう
本章では、亡くなった人物の肖像画や、川口隆夫氏をモデルに描いた『Mimesis』などが登場。取材時に描かれたスケッチや数々の習作からは、画家の人物の特徴だけでなく、内面にまで迫ろうとする過程がうかがえる。
小池寿子氏による論考では、『Mimesis』に焦点をあて、「舞踏」にまつわる美術・宗教の歴史を紐解きながら、諏訪氏の絵を通して死後に人に出会うという「奇蹟」について考察する。
古典的描法でありながら独自の視点で同時代的テーマ性をもった制作を続ける画家・諏訪敦氏の「視ること・描くこと」という行為の根源を見つめたい。
諏訪敦最新作品集『眼窩裏の火事』
価格:4,800円(税別)
発売日:1月23日(月)
判型:A4変型
ページ数:184ページ
Amazon 詳細ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4568105536
(MK)