トヨタ自動車は、セダンタイプの新型燃料電池自動車(FCV)を公開すると共に、その発売時期などの情報も併せて発表を行った。日本では、2014年内の販売開始し、販売チャンネルはトヨタ店とトヨペット店が担当する。当面は、水素ステーション整備が予定されている地域及びその周辺地域の店舗を中心に販売を行っていくという。気になる価格だが、2010年の時点では1000万以内とすることを目標に掲げていたが、新モデルは700万円程度まで抑えられる見込みだ。米国や欧州では、2015年夏頃の導入に向けて準備が進められており、海外での価格は今後決定される。
トヨタ自動車は、燃費向上・エミッション低減を目指す「省エネルギー」、電気や水素をはじめとした代替燃料の利用を促進する「燃料多様化への対応」、さらには、「エコカーは、普及してこそ環境への貢献」を基本方針として環境技術開発を進めている。「燃料多様化への対応」では、燃料選択において水素に注目。水素は、太陽光や風力などの様々な一次エネルギーを活用した製造が可能であり、電気に比べてエネルギー密度が高く貯蔵・輸送も容易なこと。そして、家庭用・自動車用燃料のみならず発電への活用も期待されるなど幅広い用途への利用が期待できるといったことから、水素を将来の有力なエネルギーと位置づけているという。
トヨタ自動車はこれまで、FCV開発において20年以上にわたり取り組んでおり、水素と酸素の化学反応により発電をするFCスタックや燃料となる水素を貯蔵する高圧タンクを中心としたFCシステムの自社開発を行ってきた。2002年以降は、日米でSUVタイプのFCVを限定的ではあるが市場に投入。特に2008年に特定ユーザー向けに販売された「トヨタFCHV-adv」は、それまでの大きな課題であった1回の水素充填の航続距離を、それまでの約330㎞から約830㎞まで向上。さらに、マイナス30°という寒冷地での低温始動走行も可能となり、事実上ほぼ支障の無い走行性能を可能とした。
これまでの様々な市場フィードバックや研究成果などを活かされ、開発が進められているセダンタイプの新型FCVは、後続距離を約700㎞確保すると共に、水素の満充填に要する時間は3分程度とガソリン車の給油時間と同等レベルを目指したものだ。そして最も大きな特徴は、走行により排出されるのは、水素と酸素の化学反応で発生した水だけであること。つまりゼロエミッションを達成したモデルなのである。エネルギー密度が高い水素は、タンク容量を増やしても、バッテリーの容量を増やさなくてはならない電気自動車よりもコストが抑えて、航続距離を伸ばせるところもメリット。今後、水素ステーションが普及し、販売台数が増加していけば、FCVも多くの人にとって、より現実的な新たな選択肢となっていくことだろう。詳しいスペックやインテリアなどの情報は、現時点ではまだ公表されていない。