総工費400億円。日本や世界中の匠の技術を融合させてバブル絶頂期の1989年に白浜の地に誕生した「ホテル川久」。
22.5金を用いた壮大なエントランスホールの金箔天井が、金箔表面積でギネス世界記録に認定された。
■使用した金箔は約19万枚、総重量は2.5キロ
エントランスホール天井部の金箔表面積は1056.97平方メートル。使用した金箔はドイツ製の995/22.5金。厚さ1ミクロンの金箔を約19万枚使用し、総重量は2.5キログラムに及ぶ。
手がけたのは、これまでパリのコンコルド広場やヴェルサイユ宮殿、アメリカの自由の女神など歴史的建造物の修繕を担い、“金箔の世界一の名工”と称されるフランスの人間国宝ファブリス・ゴアール氏。
同氏からのメッセージの一部を以下に抜粋する。
拝啓
今回のギネス世界記録認定は名誉であり非常な喜びであります。
この短いメッセージを書くにあたり、私の胸は熱い思いでいっぱいです。日本の皆さまが私どもの仕事、ノウハウ、技術に関心を寄せて頂いたことに感謝いたします。
これが川久での冒険、挑戦の始まりです。私たちは3人のチームで川久へ行き、二か月であの天井を仕上げるという前代未聞の課題に挑み、それを成し遂げました。
あの現場には世界中からあらゆる分野の名人達人が集まっていました。毎日同じテーブルを囲んで食事をしながら彼らと親しく知りあい、お互いの知識や情報を交換することが出来ました。このような貴重な機会はよそでは絶対にありません。
30年が経った今、残念ながらすでにこの世を去った人たちもいます。今回のギネス受賞はなつかしいそれら当時の仲間たちと築いた思い出が蘇るものでもありました。改めてこのプロジェクトに参加させて頂いたことを誇りに思い、厚く御礼申し上げます。
ファブリス・ゴアール
■美術館としての顔も持つ「ホテル川久」
ホテル川久には今回の金箔天井以外にも、中国の紫禁城にのみ使用を許された「老中黄」の瑠璃瓦や、イタリアの職人によって敷き詰められた緻密なローマンモザイクタイルの床、2世紀頃のシリアで作られた鹿と豹のビザンチンモザイク画など、貴重な美術品がちりばめられている。
それら美術品の保存と伝承を目的とし、2020年6月に「川久ミュージアム」としてオープン。
白浜の美しい海と各国のアートを楽しめる名スポットが誕生した。
ホテル川久:和歌山県西牟婁郡白浜町3745
(TF)