築地に玉寿司2代目店主の想いを受け継ぐ「鮨 本店上ル」がオープン。完全予約制の店で入魂の江戸前寿司を

「築地玉寿司 築地本店」2階に、完全予約制の新店「鮨 本店上ル」が11月1日(火)オープンした。江戸前寿司店を展開している玉寿司の伝統を受け継いだ新たな店舗に注目したい。

創業の地に誕生する新店舗

「鮨 本店上ル」は、「築地玉寿司」の2代目店主・中野里ことさんをイメージした店舗。戦後の焼け野原から再建し、まもなく100周年を迎える「築地玉寿司」の礎を築いたのが彼女だ。その生き様を描いたストーリーは舞台にもなり、これまで4度にわたり上演され、共感を呼んでいる。

今も脈々と受け継がれる、「築地玉寿司」の原点とも呼ぶべき“ことの想い”が詰まった店をつくろうと、創業の地「築地玉寿司 築地本店」の2階に、カウンター19席の寿司店をオープンした。

玉寿司の暖簾を守り続けた女性

初代中野里栄蔵さんが大正13年に創業した玉寿司は、順調に繁盛したが、時代は太平洋戦争へ。終戦の年、栄蔵さんは病気の末に亡くなった。さらにその年の3月には東京大空襲に見舞われ、店も住居も消失。戦後の焼け野原の中、玉寿司を引き継いだのが妻のことさんだった。

栄蔵さんの最期の言葉「玉寿司を頼む」という想いを胸に、二代目ことさんは玉寿司の再建を強く決意。4人の子供を抱えながらの再建は苦難の連続だったが、昭和40年に3代目孝正さんに受け継ぐまで気丈に暖簾を守り続け、現在の玉寿司の礎を築いた。

メニューは店主おまかせコース2種のみ

築地・平成通りに面する「築地玉寿司 築地本店」横の階段を上り、入口の扉を開けると、古き良き昭和の時代の趣をたたえるカウンター鮨の店が現れる。

メニューは、「店主おまかせ極みコース(16,500円)」と「店主おまかせ口福コース(14,300円)」の2種のみ。

限定スパークリングまたは乾杯ビールとペアリング日本酒3種、好みのドリンク2種がつく「限定ペアリング」は5,500円プラスだ。

江戸前にぎりから発酵に注目した料理まで

おまかせコースでは、鮪の漬けや煮穴子、小肌といったネタを赤酢のシャリと握る代表的な江戸前にぎりはもちろん、「白子すり流し」「毛蟹」「鮑お造り」など、厳選素材にひと手間を加えた一品料理も楽しめる。

冷蔵庫もなかった古い時代からの生活の知恵“発酵”に着目し、自家製の自然発酵調味料「醤(ひしお)」を使用した料理が味わえるのも同店の特徴。

「卵黄醤漬け」は、醤に漬けたコク味豊かな卵黄をシャリに乗せ、海苔で巻いて食べる一品。「鮑お造り」には肝と醤を和えた醤油を添え、鰹には玉ねぎの醤を合わせる。旨み成分たっぷりの発酵調味料を活用し、素材のさらなる美味しさを引き出す。

箸休めには、“もったいない”が口癖だったことさんの精神を受け継ぎ、魚の骨・皮や通常使われない部位を無駄なく使って美味しく仕立てたつまみが用意される予定だ。

また、戦後の混乱期に店で販売していた手作りの干し芋を現代風にアレンジしたものが、デザートとして登場する。

新鮮な旬のネタを、熟練の職人が丁寧な手仕事で仕上げる本格江戸前寿司を堪能しよう。

鮨 本店上ル
所在地:東京都中央区築地1-9-4 築地本店2階
営業時間:17:00~23:00(L.O. 22:30)※完全予約制
店休日:なし
玉寿司公式サイト:https://www.tamasushi.co.jp

(田原昌)

※写真はイメージ
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