黒澤映画ができるまでの過程や、制作秘話は必見。
展覧会「脚本家 黒澤明」が、8月2日(火)〜11月27日(日)に、東京・京橋にある国立映画アーカイブにて開催。修業時代から後期作品まで、「書く人」としての映画監督・黒澤明氏の仕事をたどる。
黒澤作品を一から紐解く展覧会「脚本家 黒澤明」
黒澤氏は、若き日から世界の文豪たちの影響を受けながら、自身もシナリオを執筆することで成長した。この展覧会は、黒澤氏のこうした側面に着目し、名作脚本の生成・変更の過程を分析する。
さらに他の監督たちに提供した脚本、新たに発見された未映像化脚本も加えて、「シナリオ作家・黒澤」の創作の秘密を解き明かす。
黒澤明の誕生から活躍の歴史をたどる
展覧会の構成は、第1章から第8章、特別コーナーからなる。
第1章〜第4章
第1章は、「脚本家・黒澤明の誕生」。初めて映画化された『幡随院長兵衛』(1940年、千葉泰樹監督)以来、監督デビューに至るまでの“書く人、黒澤明”の道のりをたどる。第2章では、「敬愛した文豪たち」として、ドストエフスキー、シェイクスピア、山本周五郎さんを取り上げ、黒澤氏の映画世界に大きな影響を与えたバルザックの小説についても新たな考察を加える。
第3章では、「『七人の侍』創作の秘密」として、侍たちそれぞれのキャラクターの構想、ストーリー構成の過程を解き明かす。第4章は、「いきなり決定稿」方式というスリリングな生成過程で作られた、『隠し砦の三悪人』をめぐってその過程をデジタル展示システムを用いて紹介する。
第5章〜第8章
第5章では、『酔いどれ天使』(1948年)、『生きる』(1952年)、『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)、『天国と地獄』(1963年)といった名作群のシナリオを執筆の段階ごとに読み解きながら、その生成過程を明るみに出していく。
第6章では、大作『乱』(1985年)や、クレジットされていない『デルス・ウザーラ』(1975年)を含め、後期の黒澤映画に欠かせない存在となった脚本家・井手雅人さんの功績を、貴重な一次資料も含めて明らかにする。
第7章では「黒澤が提供した脚本たち」と題し、自身では監督していない執筆脚本の数々を紹介。第8章ではクランクインまで進みながら監督降板となった『トラ・トラ・トラ!』をはじめ、黒澤さんが心血を注ぎながらも映画化に至らなかった幻の脚本の数々を紹介する。
そして、特別コーナーでは、海外で出版に至った黒澤映画の脚本と、また外国との合作企画に際して製作費を調達するため必要となった英訳版のシナリオを展示する。
同館では、2010年の「生誕百年 映画監督 黒澤明」展をはじめ、展覧会を通じて黒澤映画の先端的な探求を推し進めてきた。専門家の全面的な協力を得て、そのシナリオ術に照準を当てた展覧会「脚本家 黒澤明」は、その研究の最新形となるだろう。日本が世界に誇る黒澤映画ができるまでの道のりを感じてみよう。
展覧会「脚本家 黒澤明」
期間:8月2日(火)〜11月27日(日)
会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)
所在地:東京都中央区京橋3-7-6
開室時間:11:00〜18:30(入室は18:00まで)
休室日:月曜、9月6日(火)、9日(金)、27日(火)、10月2日(日)
料金:一般250円 ※11月3日(木)「文化の日」は無料
詳細ページ:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/akirakurosawascreenwriter2022/
(hachi)