朝日新聞出版が『大英博物館所蔵 未発表版下絵 葛飾北斎 万物絵本大全』を4月25日(月)に発売。
この版下絵は19世紀後半に国外に流出し、長い間、パリの著名な日本美術収集家の個人コレクションとして保管されていたものだ。
版下絵とは、版画にするための「原画」のことだ。本来ならば版木に彫られた段階で消滅するはずのものだが、何らかの事情で計画が頓挫し、その結果103点は残りつづけ、180年の時を越えて、人々の前に姿を現すこととなった。
前例がない「世界ビジュアル大百科事典」への北斎の挑戦
「万物絵本大全(ばんもつえほんだいぜん)」とは、絵入百科事典のことだ。
日本では北斎よりも前の時代から、『訓蒙図彙(きんもうずい)』『万物絵本大全調法記(ばんもつえほんだいぜんちょうほうき)』などの事典が出版され、家庭学習の教科書となったり、俳諧を楽しむ人々が季節の花木を調べたり、アマチュア絵師のためのお手本になったりと、実に様々なシーンで活用されてきた。
今回、翻訳出版される版下絵103点も、同じく事典のために描かれたものだ。しかし北斎がやろうとしたのは、先人たちが取り組んだ百科事典を単にリメイクすることではなかった。
そもそも絵入百科事典が扱う伝統的な主題は、天体現象、地理、人物、衣服、動物、魚、虫、草花など17部門あると言われている。北斎はさらに、「インド(仏教)」と「中国」を主題に選んだ。
仏教の諸尊、釈迦の同時代人や弟子たちの逸話(26点)、中国文明の祖として崇拝される神話の神々、皇帝、中国の軍事・宗教・文化・伝説上の重要な人物・俗信や習慣など(38点)を付け加えたのだ。ここまでフォローしている絵入百科事典は、当時は存在しない。
本書には、大英博物館の名誉研究員であるティモシー・クラーク氏による、北斎の画家人生における『万物絵本大全』という仕事の重要性についての論考と全作品の解説を収録。版下絵は、大英博物館より提供された高精細のデータを使い、原寸大で忠実に再現した。
さらに日本語版は、北斎研究者である安原明夫氏の協力を得て、版下絵の中にある画中文字(本書では「詞書(ことばがき)」)の翻刻と読み下し文を新たに追加。巻末には「神仏名に関する日本語・サンスクリット語の対照表」も掲載している。
朝日新聞販売所からの注文で、特製ポストカードをプレゼント
最寄りの朝日新聞販売所から本書を注文すると、大英博物館の高解像度データで作成した「原寸大フルカラー・特製ポストカード」をもれなくプレゼント。北斎の版下絵と同じ、13 センチ×18.5 センチのカードだ。
2021年から2022年にかけ、ロンドンの大英博物館ではこの103点の版下絵を展示する「Hokusai : The Great Picture Book of Everything」を開催し、大盛況を収めた。いずれこの美術展が日本にも巡回し、実物の版下絵103点が見られる日を待ち望むばかりだ。そんな日に備え、今は本書を読んで、たっぷりと予習しておくのはいかがだろうか。
大英博物館所蔵 未発表版下絵 葛飾北斎 万物絵本大全
価格:4378円(税込)
版型:A4判変形、上製本、160頁、オールカラー
https://www.amazon.co.jp/dp/402258713X
(IKKI)