『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』の三部作すべてが世界的なベストセラーになっている歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏。
2020年11月20日付のThe New York Timesに氏が寄稿した「世の中が一つの大きな陰謀のように見えるとき」(原題:When the World Seems Like One Big Conspiracy)の翻訳全文が公開された。
■「単一の集団が世界を支配すること」は不可能
世界的な陰謀論の基本的な筋立て、欠陥を歴史的な観点から解き明かした考察は、「悪意ある単一の集団、思想が世界を支配している」と主張する陰謀論の蔓延に警鐘を鳴らす。
そして、我々が日々接する情報をどう捉え、自身の見識、立場を作り上げていくべきかをも示唆する。
新型コロナウイルスによってあらゆる世界観や価値観が変わろうとしている今、人類に必要とされる「確かな力」とは何か。(全文日本語訳約4,000字)
■陰謀論に共通する欠陥とは
記事内でハラリ氏が記している見解は主に以下の3点。
陰謀論とは
陰謀論は第二次世界大戦を引き起こしたナチズムのように「イデオロギー」と見なされるケースもある。それらの陰謀論は等しく「世界の表立った出来事の背後には、悪意ある単一の集団が潜んでいる」と主張する。
陰謀論の欠陥
陰謀論は「歴史はとても単純」で「世の中を操るのは比較的易しい」という考え方を不可欠の前提とする点で、どれも同じ基本的な欠陥を抱えている。
現実は——
個人、企業、宗教団体、政府などが常に何かをたくらみ、実行に移している点で、この世の中には本物の陰謀が数多く存在すると言える。しかし、単独で「全世界を密かにコントロールする」集団などは存在しない。
多くの情報が現実世界でもWeb上でも飛び交う現代。これを機に基本的なリテラシーを見直してみたい。
ユヴァル・ノア・ハラリ
歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。主な著作は『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。
Web河出:http://web.kawade.co.jp/bungei/4718/
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