離陸すると、海岸沿いに北上する。
サーファーズパラダイスのビル群を左手に見ているといつしか機体は雲海の上だ。およそ1時間半のフライトはあっという間にハービー・ベイ飛行場に到着した。
飛行場から港までは車ですぐに到着。ホエールウォッチングの船に全てのゲストが乗り込むと、いよいよ出航となる。
ザトウクジラは毎年7月末から11月までクイーンズランド州の海岸線沿いを通ってウィットサンデー諸島の温かい水域まで移動し、ハービー・ベイの穏やかな海で、子どもを産み、育てる。
ハービー・ベイでは、ほぼ100%の確率でクジラを見ることができる世界でも最高のホエールウォッチング・エリアだ。
この日は天候もよく、波もなかった。日本が夏の時期は、南半球は冬。クジラのいる海域に到着するまでの1時間半強、デッキに出ている客は少なく、船内でアナウンスを聞きながらくつろいで過ごしている。
船が停止すると、ゲストは次々とデッキに出てクジラを探し始める。海面にクジラの潮吹きがあがった。
あそこだ!
歓声とともに、クジラのいるほうのデッキにゲストが集まる。船内で「手をたたいて大きな音を出すとクジラの関心を引く」とのアナウンスがあったので、身を乗り出して手をたたく人や指笛を吹く人などが続出。
当のクジラもスパイホッピングをして、こちらを見ている。
そのうちクジラが1頭ではないことに気づいた。3頭のクジラが船の近くで泳いでいる。そのうちの1頭は明らかに小さい。子連れのファミリーがやってきたようだ。
白い腹を見せて船体の下に潜り反対側へ抜ける。船の大きさと比較でき、ますますクジラの巨体に圧倒される。
船から少し離れては大きな胸びれで海面をたたいてみせたり、ジャンプしてみたりと、サービス精神も旺盛だ。その都度、船の上では歓声があがる。
初めて間近で見ることができたクジラに、世界各国からやってきた大人たちの興奮がほとばしる。わざわざ足を伸ばして訪れた甲斐があったというニュアンスの外国語が飛び交っていたようにも感じた。
ふと海の向こうに目をやると、2隻、3隻とホエールウォッチングの船が止まっており、それぞれ船に寄って来たクジラとの交流を楽しんでいた。
小1時間ほどで港に引き返す時間がやってくる。名残惜しいが贅沢な時間に感謝して、フレンドリーなクジラの親子とお別れだ。
またいつの日にか会えることを祈りつつ。
(小椚 萌香)
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