【まとめ】見学や試飲も楽しめる、行ってみたい国内のウイスキー蒸留所5選。おすすめのお酒も紹介

「ジャパニーズウイスキー」は、ここ数年で人気を集め、国内外で愛好者が増加した。今回は、大手から小規模の「クラフトウイスキー」に至るまで、おすすめの蒸留所とお酒を5つ紹介したい。

目次
50年の歴史を感じる、サントリー白州蒸留所がリニューアル
国内外で高評価、「日の丸ウイスキー」生み出す八郷蒸溜所
1919年からの老舗、江井ヶ嶋蒸留所の個性豊かなウイスキー
国内有数のスモーキーな香り、能登半島地震の被災地支援も
野沢温泉にあるニューカマーな蒸留所、新たないぶきに注目

50年の歴史を感じる、サントリー白州蒸留所がリニューアル

サントリーは2023年10月、山梨県北杜市の「白州蒸溜所」をリニューアルした。竣工から50周年を迎えた今回のリニューアルではビジターセンターなどを一新。特典が豊富な見学ツアーも実施する。

新たなビジターセンターは、自然環境を反映したデザインが施されており、オリジナルグッズの購入が可能な「ビジターセンターGift Shop」が併設された。敷地内には野鳥の保護区「バードサンクチュアリ」があり、訪れる人々に自然の美と生態系を感じさせるようになっている。

新たなツアーは、「白州蒸溜所 ものづくりツアー」および「白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム」というタイトルで、それぞれ3,000円と5,000円で参加可能だ。これらのツアーでは、サントリーシングルモルトウイスキー「白州」の製造工程の紹介や試飲が楽しめ、終了後にはオリジナルテイスティンググラスがプレゼントされる。

同社のシングルモルトウイスキー「白州25年」は、2022年に英国で開催された「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」で、ジャパニーズウイスキー部門で最高賞「トロフィー」などを獲得。ジャパニーズウイスキーの世界的な地位をより高める結果となった。

「白州蒸溜所」でサントリーの伝統とこだわりに触れながら、洗練されたジャパニーズウイスキーの世界を体験してみては。

白州蒸溜所
所在地:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
公式サイト:https://www.suntory.co.jp/factory/hakushu/

国内外で高評価、「日の丸ウイスキー」生み出す八郷蒸溜所

木内酒造が手掛ける「八郷蒸溜所」(茨城県石岡市)の新たなビジターセンターが、2023年11月にグランドオープンした。同社の歴史やウイスキー製造へのこだわりを展示するコーナーや飲食コーナー、商品販売ショップが設けられ、訪れる人々に多彩な体験と楽しみをもたらしてくれる。

同社は16年からウイスキー製造を開始。20年には国産原料を使用したジャパニーズウイスキーの製造と規模拡大を目指すため、同蒸溜所を始動させた。

ビジターセンターでは、展示コーナーの他に、同社が製造するさまざまな「日の丸ウイスキー」の販売コーナーを設置。飲食スペースも設けられ、蒸留所限定のウイスキーや隣接する細谷ファーマーズが試験的に育てた豚を使用した「常陸野ハム BARREL SMOKE」などを味わうことができる。

また、定休日を除く平日も”有料試飲付き見学ツアー”を実施。製造工程ごとに、同社のウイスキーづくりのこだわりを分かりやすく図示した解説パネルなどを設営し、ウイスキー製造の様子をわかりやすく理解できる。

同蒸溜所は、23年にアジア最大級の「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション」で「ベスト・ジャパニーズ・クラフト・ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、その先進性や独自性が評価された。「日の丸ウイスキー」も、同年の世界的な酒類コンペティション「The San Francisco World Spirits Competition 2023」で金賞・銀賞を獲得し、国際的に高い評価を受けている。

独自の味わいとストーリー性のあるモノづくりに挑戦し続けている木内酒造の「八郷蒸溜所」は、これからも高品質なジャパニーズウイスキーを生み出す拠点として、国内外で注目されていくだろう。

八郷蒸溜所 ビジターセンター
所在地:茨城県石岡市須釜1300
公式サイト:https://hinomaruwhisky.com/visitorcenter

1919年からの老舗、江井ヶ嶋蒸留所の個性豊かなウイスキー

江井ヶ嶋酒造の持つ「江井ヶ嶋蒸留所」(兵庫県明石市)は、1980年代の地ウイスキーブームを経てなお製造を続けている、日本で数少ない老舗蒸留所だ。その出発点は1919年のウイスキー製造免許取得にあり、長きにわたって設備・技術を継承し続けてきた。

同蒸留所の特徴は、他にはない個性的な熟成樽と、様々な貯蔵年数の原酒が豊富に保管されていることだ。これにより、ブレンダーが多様なウイスキー原酒を厳選してヴァッティングすることが可能となり、個性豊かで高品質なシングルモルトウイスキーが誕生している。

代表ブランドである「あかし」は国内・海外ともに幅広く出荷しており、ウイスキー製造免許取から101年目を迎えた2020年には、新たな一歩として新ブランド「江井ヶ嶋」を立ち上げ、こだわりのあるプレミアムなウイスキーをリリースしていく方針を明確にした。

また江井ヶ嶋蒸留所では、事前予約を行えば見学が可能となっている。

新製品「シングルモルト江井ヶ嶋 QUARTET」は、異なる貯蔵年数と熟成樽の種類を持つ4種の原酒を、ブレンダーの大川啓太氏が見事にヴァッティングし、四重奏を表現している。バーボンカスク、クリームシェリーカスク、ポートワインカスク、スパニッシュブランデーカスクの4つの異なる要素が絶妙なバランスで融合し、ウイスキー愛好者に楽しい味わいをもたらしてくれる。

歴史の深い独自の技術や設備を用い、ウイスキーに特有の個性を生み出し続けている「江井ヶ嶋蒸留所」で、多彩で興味深いウイスキーの世界を味わってみてほしい。

江井ヶ嶋蒸留所
所在地:兵庫県明石市大久保町西島919
公式サイト:https://www.ei-sake.jp/index.html

国内有数のスモーキーな香り、能登半島地震の被災地支援も

若鶴酒造の「三郎丸蒸留所」は、1952年からウイスキーづくりを始めた歴史を持つ蒸留所だ。国内では珍しいスモーキーな原酒造りをポリシーとし、特にスコットランドのアイラ島のピート(泥炭)を使用するなど、独自性と品質で高い評価を受けている。

同社では毎年新しい設備や工夫を取り入れ、酒質の進化を追究。2019年には鋳物製ポットスチル「ZEMON」を開発・導入し、世界的な注目を浴びている。

同蒸留所は、17年に見学可能な蒸留所にリニューアルした。これにより、一般の人々が製造プロセスを垣間見ることができ、酒造りの奥深さや独自性を感じることができるようになった。

同社は今年1月の能登半島地震を受け、チャリティーボトルの製造・販売を開始する。この売上は被災地支援のため、全額が日本赤十字社に寄付される。同蒸留所は震源に近い富山県砺波市に位置しているが、一部停電があったもののウイスキーには被害はなかったという。

チャリティーボトルは、同蒸留所で20年に蒸留され、3年間熟成されたシングルモルトウイスキーで、スモーキーなヘビリーピーテッドタイプの個性が際立っている。ラベルイラストは、地震で崩れた能登のシンボルである見附島の姿と昇る朝日が描かれ、復興への思いが込められている。

国内有数のスモーキーなウイスキーを作る「三郎丸蒸留所」と、能登半島地震の被災地を応援する意味でも、同蒸留所の見学やチャリティーボトルの購入を検討してみてはいかが。

三郎丸蒸留所
所在地:富山県砺波市三郎丸208
公式サイト:https://www.wakatsuru.co.jp/saburomaru/factory/

野沢温泉にあるニューカマーな蒸留所、新たないぶきに注目

野沢温泉地域の新たな観光名所「野沢温泉蒸留所」が2022年に開業した。同蒸留所は、地元の食材やボタニカルを使用した少量生産のシングルモルトウイスキーなどを製造。ウインターシーズンに賑わうスノーリゾートの野沢温泉で新たなウイスキーが誕生したとして注目されている。

同蒸留所では、シングルモルトウイスキーをスモールバッチで生産しており、年間300樽、約10万本の生産量に拡大する目標を掲げている。このほか年間5万本のクラフトジンを生産する計画を立てており、四季ごとのリリースや地域コラボレーションも予定されている。

また、高品質な地元産の材料を活用し、地元のコミュニティと協力しながら持続可能な実践を行うという3つのコアバリューに基づいた運営を実践。地元の農家と協力し、可能な限り再生可能なエネルギーを使用しながら、地元のサプライヤーを雇用して投資を行っている。

同社のウィスキーは2023年、東京ウイスキー&スピリッツコンペティションで「ニューカマー賞」を受賞。これにより、同蒸留所の高い技術とクオリティー、ユニークな製造方法が評価された。

「野沢温泉蒸留所」は現在、見学ツアーは行っていないが、試飲やショップは利用できるので、近くを訪れた人は足を運んでみてほしい。

野沢温泉蒸留所
所在地:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9394
公式サイト:https://nozawaonsendistillery.jp/

今回紹介したのは、国内に数多くあるウイスキー蒸留所のほんの一部だ。製造の現場や作りたてのお酒を味わいながら、ジャパニーズウイスキーの世界を堪能してみては。

(永井瑞穂)