“amazing”、瞠目するような素晴らしいもの、言葉を失うような感動に出会ったときに使う言葉である。
LEXUSブランドは近年“AMAZING IN MOTION”というスローガンを打ち出し、クルマという枠を超越したエキサイティングな活動を行っている。
身近にその世界を感じられるところでは、テレビCMがある。神聖さすら感じさせる純化された“動”の美が印象的なショートフィルムは毎回大きな話題となり、新作を楽しみにするファンも多い。他にもオリジナルな空間、様々なプロダクト、文化、スポーツなどAMAZING IN MOTIONの世界は自由で幅広い。
その活動の中のひとつ『LEXUS AMAZING EXPERIENCE』で、LEXUSは新しい“大人の遊び”とライフスタイルを提案している。驚くような体験、その体験に触発される感性を楽しむ数々のプログラムは、どれも知的で刺激に満ちている。
今回、『LEXUS AMAZING EXPERIENCE』とファッション誌『VOGUE JAPAN』とのコラボレイションが実現した。VOGUE JAPANといえばもちろん最先端のハイファッションのみならず、ライフスタイル、アート、カルチャーと、女性の一人としては「美容室でVOGUE JAPANを出されたら、ちょっと自分に自信が持てる」そんな雑誌である。
LEXUSとVOGUE JAPANがが演出する今回の“大人の遊び”の舞台は、金沢。“モダンとヘリテージ”をテーマとするドライブトリップに同行した。
最初に訪れたのは大樋美術館。金沢駅からクルマでわずか10分という街中に、その趣きある建物はある。
『大樋焼』は、裏千家四世仙叟宗室とともに金沢に楽焼をもたらした初代長左衛門を祖とする焼き物だ。北陸の焼き物というと九谷などのイメージが強いが、「金沢の茶陶」と言うなら大樋焼。手捻りによる造形と独特の飴色の釉は、京都の楽焼きともまた違う和らぎやまろみを感じさせる。現在は、第十代 大樋長左衛門と子息である大樋年雄氏が、その歴史と血脈をいまに継ぐ。
「焼き物を学ぶ」というと、ガラスケース越しに解説を読んで……と思いきや、今回の旅は最初からひと味違った。ただの鑑賞にとどまらない、“体験”がもたらす驚きにこの最初の舞台から翻弄される。
まず美術館内では、大樋焼の次代を担う年雄氏から直接解説を受けた。これはとても貴重な経験であった。
脈々と受け継がれる伝統の重み、大樋焼以外にも言及した“うつわ”の変遷、文化を守る家に生まれた一個人としての生活や葛藤。明快で楽しい語り口はときにとても叙情的でもあり、ただ静かにそこにある器達をなんとも生き生きと浮かび上がらせてくれた。
そして美術館での鑑賞を楽しんだ一行が、最後に案内されたのは茶室。
襖が開いた瞬間に息を飲む。そこには樹齢500年の赤松「折鶴の松」を見上げる異空間が広がっていた。とても親密でありながら、おおらかな広がりを感じさせる茶室で、大樋年雄氏による茶会を堪能する。
大樋焼の茶碗でいただくお茶とともに供されたのは、石川県出身のパティシエ辻口博啓氏の手によるオリジナルスィーツ『Grue Ohi』。お茶や和に多分に寄せて作られたものかと思いきや、とんでもない。もちろん和のエッセンスは取り入れながらも、パイナップルのエキゾチックな香りが官能的で、パティシエ辻口氏の個性と創造性を存分に感じられる。
そして、従来のお茶のイメージを覆される体験はこれにとどまらない。
「フォーマルの中にあるカジュアル、カジュアルの中のフォーマル」。
この日のもてなしと装いについて年雄氏が表現した一節であるが、まさにそんな息づかいと心配りが行き届いていた。彼の装いはシックな草木染めに、英文字のモチーフやTシャツ、ネックレスなど日常の感覚を取り入れたもの。
そしてそのもてなしにも伝統への敬意と、破格とも思えるカジュアル感が絶妙に混在していた。お点前はあくまで折目正しくありながら、描き出される場の空気はどこまでも気さくで寛容なのだ。旅の参加者も、お茶の心得の無い筆者も、それぞれに笑い、膝を崩し、時には写真を撮り合ったり。
一見それは“茶席らしくない”一席だったかもしれない。しかしやはり茶人の演出する本質的な茶の湯の体験であったように思う。
会の最後には第十代大樋長左衛門氏による挨拶も。文化勲章受章の当代は、意外なほど飄々とした洒脱な語り口で一座を沸かせた。
茶陶を知るために何が大切かというと、やはり「お茶を飲む」ことなのだな……と、感慨を新たに大樋美術館をあとにする。
ここからは、参加グループがそれぞれ希望のLEXUS車両を各自で運転するドライブトリップとなる。
一路向かうのは『乙女寿司』。百万石の城下町でいま一番の注目を集める寿司店だ。
【その2につづく】
(くぼきひろこ)