13-14の秋冬コレクションでのデビュー以来、革ジャンを中心としたラインナップで多くのファンを魅了し続ける、東京を拠点としたブランド「STRUM(ストラム)」。
かねてから音楽や映画に造詣が深いデザイナー・桑原和生氏によって生み出されるアイテムは、音や映像を感じさせ、着る人の世界観を引き出す。
今回は同ブランドの中でもひと際異彩を放つ、燃やしながら染める技法“バーニングダイ”で生まれた革ジャンについて紹介したい。
“燃やす”のと同時に染色を施した革ジャン
「バーニングダイ」とは、革を下地のまま製品にして、燃やしながら製品染めを行う特殊な技法を指す。その仕組みは、着色時の染料に高濃度のアルコールを混ぜ、着火と同時に染色し、焦げ痕や煤を革ジャンに定着させるというもの。
しかし、ただ燃やすだけでは革が死んでしまい、硬化して着れる状態ではなくなってしまう。ブランドが職人と何度も試行錯誤した末、ようやく実現した技法だ。
デザイナーの桑原氏は若い頃からパンク、ロックが好きで、楽器やアンプを燃やす姿からインスパイアされ、“革ジャンを燃やす”という発想を生み出した。
同氏によれば「燃える」にはいろいろな意味があり、“熱くエキサイティングする”という意味や、“死んで、燃やして、無くなり、また生まれかわる”といった意味合いもあるのだという。
汚れや傷が味となる、“育てる”革ジャンの魅力
桑原氏は「革ジャンは人生とよく似ている」と語る。人は生きるうちに様々な経験をして成長し、やがてその人の深みや厚みが出てきて味となる。同じように、革ジャンも経験することで育っていく。
例えば桑島氏は、普段着ている革ジャンについて、人からよく「その革ジャンが欲しい」と言われることがある。しかしそれは、桑島氏自身が数年間、着続けることによって“育った”革ジャンだ。
着る人の汗やシミはもちろん、バイクで転倒した時の傷でさえ、いい味となりその人の革ジャンに刻まれる。それが育っていき、結果、格好良く見えてくるのだという。
「バーニングダイ」で生まれた革ジャンも、その人の着方によって、表情が大きく変わっていく。
例えばあまり陽に当たらず、よく脱ぎ着する人は、手の脂によってレザーの色が濃く深くなっていく。一方、陽によくあたる習慣がある人は、下地の茶色がプルアップして出てくるなど、独特の深みとムラ感が生まれる。
楽しみながら自分だけの一着を育てられるのが、「バーニングダイ」の醍醐味と言えるだろう。
この「バーニングダイ」についてデザイナー本人が語るメッセージムービーが、現在、YouTubeチャンネル「STRUM-CH」でも公開されている。“燃える”という究極の経験をした革ジャンは、心強いパートナーとして共に人生を歩んでくれるに違いない。
STRUM公式HP:https://strum.jp
STRUM-CH:https://www.youtube.com/c/STRUMCH
(IKKI)