冬の景色に移り変わる晩秋の白川郷を訪ねて

岐阜県荘川流域にある合掌造りの集落で知られる白川郷。五箇山の合掌造り集落と合わせ世界遺産に登録されている。

 

早春の雪解け、田植え前の水田に合掌家屋が映る景色が美しい晩春、新緑やホタルが見られる夏、稲の実りや収穫を経て、冬の雪景色へと移りゆく四季折々に自然豊かな土地。

そんな白川郷の荻町地区は、今も人々が生活を営む場であり、観光客でも賑わいを見せる。合掌造りの家屋は、内部の見学や食事、宿泊できるところもある。

 

晩秋に訪れると、集落を包む山は紅葉していただろう葉を落として枝を広げる広葉樹と、深い緑色を保つ針葉樹とがまだら模様をなし、やがて来る雪の降り積もる季節に備えているようだった。

家屋の周りの柿の木には熟した実が日暮れに沈む太陽のように深い朱色で枝々に実っている。秋たけなわの日本の原風景はどこか淋しいような切ないような感傷的な気分になる。

 

メイン通りにある「今藤商店」の店頭では飛騨牛コロッケや飛騨牛串焼きが売られ、店内に入ると飛騨の地酒がずらりと並んでいる。

立ち飲みのカウンターでは日本酒の飲み比べも愉しめる。白川郷の名物の辛口で米粒が残った本格生どぶろくもおすすめだそう。

 

集落を上から望むには白川郷バスターミナルの後方にある天守閣展望台または荻町城跡展望台まで足を運ぶ。

徒歩で登るなら切妻合掌造りの和田家東方から緩い傾斜の歩道を登るコースで約20分、車で登る場合は城跡の裏から回るルートで10分ほど。

雪深い冬の景色と異なり、合掌造りの茅葺き屋根が温かみを感じさせる景色があった。

 

夕刻になり、平瀬温泉に移動して宿泊した晩に初雪だろうか、天から粉雪が舞ってきた。

翌朝、再び白川郷へ寄ると一夜にして集落はうっすらと雪化粧を施されていた。

 

深々と降る雪はこれからますます田畑や道路、家屋の屋根に積もり、一面の白い世界に変えてゆくことだろう。

 

(小椚萌香)