ニースからモナコに向かう途中、地中海の海岸沿いは複雑な地形をしており、深く入り組んだ入り江や港になっている。
中世の頃、海に面していたこの辺りは外敵から身を守るため、「Nid d’Aigle(鷲の巣村)」という独特の村を作って暮らしていた。それらは切り立った岩山に築かれており、海からは山しか見えない。そうして人々は身を隠していた。
ニースまたはモナコからバスに乗って20〜30分、鷲の巣村のひとつである「Eze(エズ)」に着く。
鉄道の場合エズ駅は山の下にあるが、そこから村までの山道がニーチェが『ツァラトゥストラはかく語りき』の構想を練ったと言われている「Chemin de Nietzsche(ニーチェの道)」。体力と時間があったら是非。
石造りのしっかりとした門をくぐって村に入る。ここから先は急な坂道や階段を上ったり、村の間を縫うようにして通る細い道を歩いて行く。たまにちらりと見える地中海が美しい。
岩山にぽつぽつと家が作られているのかと思ったら、お互いが壁できっちりとつなぎ合わされているかのように家並みがずっと続く。道を挟み、家の壁そのものが村の城壁のようだ。
岩山に沿って(あるいは削って)作られている村なので、アップダウンが激しい。また村を通り抜ける道が複雑な迷路のようになっているので、地図を持って回るのは難しそうだ。
気ままに、好きな道を選んで散歩するのがオススメ。
中にはレストランやお土産店、アトリエなどになっているので、それらをのぞきながらのんびりと回るのがいい。
広い村ではないので急げばあっという間に回れてしまうが、石造りの家に花が咲き乱れ、ひっそりとした小道が情緒に溢れているのでゆっくりと時間を過ごしたい。
どこを撮っても、絵になる村だ。
茶系の壁にオレンジ色の瓦屋根。青い地中海と青い空に映えて、最高に美しい村。
コートダジュールを訪れたなら、是非とも立ち寄って欲しい村である。
(田原昌)