巨大な版図を広げたローマ帝国。もちろん南仏も版図に含まれており、当時の遺跡の保存状態が非常によい事が特徴だ。
港町・マルセイユから列車で約1時間。内陸に入ったローヌ川沿いに、アルルの街はある。石造りの「Porte de la Cavalerie(ガヴァルリ門)」を抜けて少し歩けば、目の前に巨大な建造物が見えてくる。これがアルルを代表するローマ遺跡のひとつ「les Arènes d’Arles(円形闘技場)」だ。
イタリアのコロッセオに比べると小さいものだが、フランスでは最大の闘技場だそうで、非常に状態が良い。
説明を読むとアウグストゥス(初代ローマ皇帝・カエサル)の時代のものだというので驚いた。今から2000年も前の1世紀に建てられたものとは思えない。
白くて美しい石には、よく見ると貝などの化石が見られた。それらをいくつも積んですらりと立ち上がった柱に、アーチがかかって天井を支えている。構造がしっかりとしており、当時の建築技術の高さに舌を巻く。
闘技場を中心に、ぐるりと囲む石段の観客席。その内側には何段もの廊下が走っており、違う身分の者が出会わないような工夫が成されていた。身分の差はあっても、市民なら誰でもが観客として闘技を楽しんだことがうかがえる。
通路を渡って一番高い所まで行くと、アルルの街が見渡せる高台に出た。ローヌ川のゆったりとした流れ、可愛らしい街の赤い屋根。
自分が紀元1世紀の建物に立って街を眺めているのだと思うと、感動もひとしおだ。是非ここに立ち、悠久の時間の流れを感じて欲しい。
今でもこの闘技場は闘牛場として使われており、米の収穫祭として行われる闘牛の日には街は大賑わいなのだそうだ。ローマ時代の闘技場で闘牛とは、素敵な歴史のロマンを感じさせる。9月に行われるそうなので、機会があったら見に行ってみたい。
(田原昌)