価値観が多様化する現代社会において、価値観の違う人と付き合っていくのは容易なことではない。そもそも価値観は一人一人違うものでどれが正しいかを決める領域はないのだ。
読売新聞で100年以上も同じ形式で連載が続いている「人生案内」。一般読者から寄せられた悩みに識者が応える形式で連載され、多くは社会学者の研究対象として論文にもなっている。
現代社会を映し出す極めて貴重な資料となっている同連載が、この度『悩める日本人「人生案内」に見る現代社会の姿』(1000円・税抜)として、ディスカヴァー・トゥエンティワンより発売された。
日本の社会は既存のモデルの人生を歩んでいる人には都合よくできている。しかし「人生案内」に見られる価値観の多様化は確実に進んでおり、現実には既存モデルからこぼれ落ちる人が増えているのだ。
例えば50代の妻は、夫の女装癖を知ってショックを受け、これからの老後をどのように一緒に過ごすかが不安だという。この悩みに対して、受け入れられなければ別々に暮らし、我慢できるのであればそっとしておくことだと回答している。どうやら夫自身は女装癖を価値観の現れと見ており、いわゆる「あたりまえ」が通用しない様々な価値観が存在しているということなのだ。
本書では、恋愛しない若者と恋愛に走る高齢者という内容で、恋愛観についても社会問題として取り上げている。不本意な結婚生活を理由に、恋愛をやり直したい欲求から恋愛に走る高齢者たち。一方では「恋愛が面倒くさい」という理由から、恋愛に積極的に慣れない若者が増えているという。
「現代社会×悩み×3つの傾向」「現代的悩みの背景にあるもの」の2部構成、全6章からなる本書。他人事の悩みがいつ自分事になるかもわからない様々な相談事が、これからの社会をより快適に生き抜くための考察を深める機会になれば幸いだ。