荘厳な龍神を描いた「金子 富之展」日本橋高島屋で開催。豊かな川や湖沼に残る水神信仰

豊富な水資源に恵まれた日本において、古来さまざまな地域で水神として伝承され、信仰の対象となってきた龍蛇。

日本橋高島屋S.C.では、12月13日(水)~2024年1月8日(月・祝)の期間、本館6階美術画廊Xにて「-龍神・龍王- 金子 富之展」を開催する。関連イベントとしてアーティストの岡田瑛里氏と、金子富之氏とのトークイベントも予定する。

黄光飛龍(2018年)

黄光飛龍(2018年)

東北を拠点に“目に見えない存在”を描く金子富之氏

東北芸術工科大学大学院修了後、山形県にアトリエを構える金子富之氏は、東北地方や世界各地で語り継がれる妖怪や怪異、神話、精霊、神仏など“目に見えない存在”を作品に描いてきた。

2015年には文化庁の制度による研修でカンボジアへ赴き、現地の宗教や信仰などの造形美術を取材した。その経験と前後するように、神や精霊などのイメージが形成される以前の根源的な存在にも向き合い続けている。

「夕闇の水際、私の足下のすぐ近くを巨大なチョウザメが横切った事がありました。不気味な迫力と得体の知れない高揚感があり、それは暗闇の冷たい地底湖に潜む龍が鱗をくねらせている様にも見えました」と語る金子氏。

「蛇もまた水神でもあり、蛇神信仰が盛んであった日本は龍を生み出す母胎としてひときわ機能し、大陸の龍の図像をベースに日本的な感性が加わり独自の龍のイメージが創造されました」という。

金子氏の心に生きる「龍」を視覚化した作品群

出展を予定するのは、空間を覆い尽くさんばかりの大作から小品まで約10点の作品。一例として、「黄光飛龍(おうこうひりゅう)」は岩絵具、墨、透明水彩、アクリルペン、箔など多彩な画材を駆使した2018年の作品。

同じく2018年の作品「沙羯羅龍王(しゃがらりゅうおう)」は、山形県の特殊な地形からインスピレーションを得ている。

山形県天童市の雨呼山(あまよばりやま)標高905メートルの中腹あたりに「ジャガラモガラ」という直径100メートル程のすり鉢状の異様な景観の地があり、地表に空いた無数の風穴から冷風が噴出しているのだという。

ジャガラモガラの語源は仏法守護の八大竜王の一人、娑羯羅龍王であるともされる。その名は“大海”を意味し、さらに八大竜王の源流は古代インドの蛇神ナーガとされる。

沙羯羅龍王(2018年)

沙羯羅龍王(2018年)

また、2017年の作品「闇罔象神(くらみつはのかみ)」の罔象は「水に住まうもの」を意味し、龍や子供のような姿の神とされる。「水つ早」と同意で、始め・端・初期といった意味から、“水の出始め”を表す言葉でもある。

雨師神(うししん)として降水現象を司る神とされ、福井県の岡太神社では紙漉きを伝えた紙の祖神とされる。越前和紙の起源になり、川上御前とも呼ばれるという。

闇罔象神(2017年)

闇罔象神(2017年)

このほか墨とペンを用いた2016年の作品「暗龗(くらおかみ)」や、70×170cm程度の新作中品3点、新作小品6点の出展を予定する。

12月17日(日)午後3時からは、同会場内にて金子富之氏とアーティストの岡田瑛里氏によるトークイベントを開催する。

また、関連商品として作品集『金子富之画文集―幻成礼賛―』を販売する。東京・新宿のミヅマアートギャラリーにて11月22日(水)より開催中の金子富之氏の個展「辟邪神(へきじゃしん)」にあわせて刊行されたもので、10代からの心象を描き連ねた膨大なノート群から、自選作品200点まで、全篇書き下ろしテキストとともに構成した画文集だ。

古くから日本の伝承や信仰に根づいた神秘的な龍蛇の世界。その深淵を覗いてみるのはいかがだろうか。

-龍神・龍王- 金子 富之展
会期:12月13日(水)~2024年1月8日(月・祝)
会場:日本橋高島屋S.C. 本館6階 美術画廊X
所在地:東京都中央区日本橋2-4-1

作品集『金子富之画文集―幻成礼賛―』
価格:4,180円(税込)
判型:B5変
総頁:192頁

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000615.000069859.html

(SAYA)