太宰府天満宮の屋根に「森」が出現!「御本殿」令和の大改修にともない特別な「仮殿」を建設

学問・文化芸術・至誠の神として広く仰がれている菅原道真公(天神さま)を祀る「太宰府天満宮」。

同宮では、菅原道真公に縁の深い25という数にちなみ、25年ごとに式年大祭を執り行い、ご神威の甦りと天神信仰のさらなる発揚を繰り返してきた。

2027年には、菅原道真公が薨去されてから1,125年という大きな節目を迎える。

「太宰府天満宮」では、この節目となる式年大祭を前に、来年5月より約3年間をかけ、124年ぶりに重要文化財「御本殿」の大改修を行う。改修期間は御本殿前に「仮殿」を建設し、参拝者を迎える。

「御本殿」の大改修により表出する「仮殿」

「太宰府天満宮」は、全国天満宮の総本宮であり、菅原道真公の御墓所の上に御社殿を造営し、その御神霊を永久に祀っている神社。「学問・文化芸術・至誠の神」として、広く世の崇敬を集め、年間に約1,000万人の参拝者が訪れる。

「仮殿」のデザイン・設計は、国内外で活躍する建築家・藤本壮介氏率いる藤本壮介建築設計事務所が手がけ、その完成図を発表した。

同宮では、3年間しか表出しない「仮殿」だからこそ、道真公にも参拝者にも喜んでもらえる場所にとの思いで、藤本氏にデザイン・設計を依頼したという。

現在の「御本殿」は、約430年前に小早川隆景公が再建したもので、桃山時代の豪壮華麗な様式を伝え、国の重要文化財に指定されている。

来年2月より「仮殿」の建設を行い、同年5月頃より3年をかけて「御本殿」の檜皮の葺替え、漆塗りなどを中心に防災工事も含めた大改修を行う。

前回の檜皮葺替えの様子(平成2年)

守り継がれてきた伝統を未来へ継承し、美しい姿を蘇らせるべく、伝統技術を用いて傷んだ箇所を修理するとともに、建築史・歴史学の専門家を中心に有識者会議を立ち上げ、修理と並行して調査・研究を行い、「御本殿」の歴史的価値と文化的意義の再評価を行っていく。

「太宰府天満宮」の豊かな自然を感じられる「仮殿」

御本殿の大改修に際して、御祭神の御神霊を仮安置するために設けられる御社殿が「仮殿」だ。鎮守の杜に囲まれたこの地で、1,100年以上鎮まる天神さまが心地よく居られる環境であることと、天神の杜との調和を重視し、屋根に木を植えるという新しくも穏やかで美しいデザインとなった。

「仮殿」のデザイン・設計を行った藤本壮介氏は、「太宰府天満宮周辺に広がる、豊かな自然が御本殿前に飛翔し、仮殿としての佇いをつくり上げることをコンセプトとした。これは、太宰府に古くから残る飛梅伝説から着想を得たものになる」と語る。

さらに、「仮殿では梅の木の他にも、天満宮周辺の植物が回廊内に軽やかに舞い、道真公のための住まいの屋根を創りあげる。屋根の上の植物は、天満宮周辺の環境とともに、季節や天候によって様々な移ろいを見せるだろう」と述べる。

「仮殿」斎場内は、現代的プロポーションと伝統的空間が水平線上に広がり、御扉を中心とした祭壇が森の影の中から印象深く映える。

御本殿の伝統的な垂木を踏襲したルーバー状の天井が曲面状に現れ、厳粛な空間を想起させる。

さらに歩を進めると、斎場の天窓から美しい空と森が目に飛び込み、天満宮の豊かな自然を体全体で感じることができるという。

類まれなる才能から、政治家・学者として、人々の厚い信頼を得ていた菅原道真公。亡くなった後、「学問・至誠・厄除けの神様」として、今も多くの日本人の身近な生活の中に息づいている。「仮殿」が完成した暁には、道真公との御神縁を深めに「太宰府天満宮」へ詣でてみてはいかがだろう。

太宰府天満宮 公式サイト:https://www.dazaifutenmangu.or.jp/

(高野晃彰)