辛坊治郎氏の単独・無寄港でのヨット太平洋往復横断記録が書籍に

旺盛なチャレンジ精神に、多くの人がエールをもらった。

辛坊治郎氏が2021年に単独・無寄港でのヨット太平洋往復横断に成功。航海距離2万5000km、5か月の船旅の記録をまとめた新刊『風のことは風に問え―太平洋往復横断記』を 2月28日、扶桑社より刊行された。

「生きて帰ってきたのは奇跡」と語った5か月

辛坊治郎氏は、2021年8月にヨットによる単独・無寄港の太平洋往復横断を成し遂げた。

日本に帰国後、会見で「生きて帰ってきたのは奇跡」と語るほど過酷だった船旅。その航海距離は2万5000kmに及ぶ。辛坊氏は、5か月もの間たった独り、船上で何を思い、いかにして困難を乗り越えたのか。

2月28日(月)に発売の書籍『風のことは風に問え―太平洋往復横断記』は、本人の航海日誌をもとに、全編書き下ろしで刊行。65歳になった今、8年越しでヨットでの航海に再び挑戦した理由が明かされる。

航海中の生放送でのやりとりについても記述

5か月間の航海中、辛坊氏がパーソナリティを務めるニッポン放送のラジオ番組『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』では毎回「5時の生存確認テレフォン」というコーナーを展開。太平洋上の辛坊氏と衛星電話をつなぎ、航海の状況をレポートしていた。

本書では、放送上でのやりとりについても書き起こしており、生放送のテンションと向き合っていた過酷な気象条件とのギャップが浮き彫りになる。

「人はたとえどんなに孤独に暮らしていても、決して一人きりではない」

同書の「まえがき」には以下のように書かれている。

「この本は「ど素人」のセーラーが、太平洋を5か月間さまよった記録だ。5か月の間、私は何を考えていたのか?

私は航海に出るまで『私の人生は、私一人で築いてきた』と信じていた。太平洋往復横断を終えた今、ハッキリと考えが変わった。

この本をお読みいただければ自然と腑に落ちるはずだが、太平洋上で私は決して一人ではなかったのだ。これは陸で暮らす皆さんも同じだろう。人はたとえどんなに孤独に暮らしていても、決して一人きりではないのだ。人は一人では生きていけない。

もし太平洋横断中に、たとえば疫病などで愛する人々がすべてこの世を去っていることを知らされたら、私は決して航海の終着点に日本の港を選ばなかったと思う。

この本にあるのは、ど素人セーラーの、みっともない、無謀なチャレンジ話だ。しかしそこには、陸の上での日常生活では決して起こりえない「奇跡」があふれている。この奇跡が、皆さんの生きる力になれば筆者望外の幸せだ」

辛坊治郎(しんぼう・じろう)氏は1956年大阪府出身。早稲田大学法学部卒業後、読売テレビ放送に入社。アナウンサー、プロデューサー、報道局情報番組部長・解説委員長などを歴任。現在は、報道情報番組の司会、ニュース解説、講演会など、幅広く活動している。

太平洋往復横断をリアルに追体験できるだけでなく、チャレンジすることの大切さ、実行して得られるものの大きさを教えてくれる一冊だ。

風のことは風に問え―太平洋往復横断記
定価:1,650円(税込)
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4594090907
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/17030238/

(冨田格)