藤原竜也×石原さとみ×吉田鋼太郎『終わりよければすべてよし』ついに開幕

シェイクスピア全37戯曲完全上演のフィナーレが幕を開けた。

左から)藤原竜也、石原さとみ、吉田鋼太郎

■圧巻の演出で魅せる大団円

1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもと国内外に次々と話題作を発表してきたシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す彩の国シェイクスピア・シリーズ。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、第35弾『ヘンリー八世』終盤4公演、第36弾『ジョン王』全公演が中止となり、シリーズの上演は約1年3か月ぶり。シリーズ最終作である第37弾『終わりよければすべてよし』は、蜷川幸雄の命日である5月12日(水)に彩の国さいたま芸術劇場にて初日を迎えた。

左から)藤原竜也、石原さとみ

2016年に2代目彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督として就任した吉田鋼太郎が、本シリーズを演出するのは『アテネのタイモン』『ヘンリー五世』『ヘンリー八世』に続き4作目。シェイクスピア作品の中でも問題劇と評される本作であるが、バートラムとヘレン、それぞれの成長物語としてフィナーレを飾るにふさわしい大団円に仕上げた。

左から)藤原竜也、石原さとみ

俳優として数々のシェイクスピア戯曲に向き合ってきた吉田だからこそ、長大なシェイクスピアの台詞であっても、一つひとつの言葉を観客に伝わるよう演者に指導し、最終舞台稽古まで細かい修正を重ねた。個性豊かな登場人物は、現代に生きる私たちにも重なる部分が多く、大きく共感できる作品に仕上がった。

左から)藤原竜也、山谷花純

舞台一面に曼珠沙華(彼岸花)を咲かせる幻想的な劇場空間は、まさに“冒頭3分で観客の心を掴む”蜷川演出を彷彿させ、シリーズ最終作への吉田の意気込みを感じる。曼珠沙華の中を縦横無尽に行き来しながら、スピード感ある場面転換で話が展開する演出は秀逸だ。

左から)吉田鋼太郎、石原さとみ

■個性的な役者陣のパフォーマンス

藤原竜也は、自分の意志に従い自由に生きる、血気盛んな若き伯爵バートラムを演じる。物語の軸として、ヘレンや王侯貴族たちに慕われ、存在感ある魅力が必要な役どころ。藤原は蜷川幸雄に鍛えられた感性をいかんなく発揮し、吉田からは「最後の作品には竜也がいなくては」と藤原に対する信頼と期待が大きい。

左から)溝端淳平、藤原竜也、河内大和

バートラムに恋する美しい孤児ヘレンを演じるのは、シリーズ初参加の石原さとみ。稽古開始当初はシェイクスピア独特の言い回しに戸惑いながらも、演出の吉田はもちろん、藤原ら共演者に積極的に相談し、身分違いの恋に悩みながらも強い意志で道を切り開くヘレン像を見事に造形し見応え十分だ。

左から)石原さとみ、宮本裕子

そして、溝端淳平、横田栄司、宮本裕子、正名僕蔵、山谷花純、河内大和ら、本シリーズに欠かせない実力派俳優陣が、バートラムとヘレンの異色の恋物語に彩りを添える。彼らは強烈な個性を放ちつつ、時代を超えて愛されるシェイクスピアの人生哲学を我々に訴えかける。

左から)横田栄司、正名僕蔵

上演時間は約2時間40分。埼玉公演は彩の国さいたま芸術劇場にて5月29日(土)まで上演。その後、6月には宮城、大阪、豊橋、鳥栖の全国4箇所での上演を予定している。

公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/owayoshi2021/

撮影:渡部孝弘

(冨田格)

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