南フランスのAix-en-Provence(エクス・アン・プロバンス)は、「近代絵画の父」と評されるPaul Cézanne(ポール・セザンヌ)が誕生した土地であり、またアトリエを作って作品の制作に打ち込み、終の住処とした場所でもある。
エクス・アン・プロバンスの街を通り抜け、北に向かうとやがて勾配がきつくなってくる。このLes Lauves(レ・ローヴ)の丘に、セザンヌのアトリエがある。
緑に囲まれたアトリエは、セザンヌ自身が設計し、亡くなるまで使っていた場所。ここでまず、彼の静物画作成の雰囲気に浸ろう。
アトリエを見学した後は、さらに丘を登る。すると、ロータリーの真ん中に門扉が立っていた。これは「セザンヌ正門」と呼ばれる、私邸の門だとか。
この門からちょうどMont Ste-Victoire(サント・ヴィクトワール山)が見えるので、一息ついて見てみよう。
さらに丘を上ると石でできた小道があった。緑に囲まれたつづら折りの小道を登っていくと、頂上が展望台のようになっている。ここに立って眺めると、まさにセザンヌが描いたようなサント・ヴィクトワール山が見えるのだ!
この「Terrain des Peintres(画家たちの場所)」には、セザンヌが描いたサント・ヴィクトワール山の複製画が置かれており、風景を眺めながら絵の中にいるような気分に浸れる。また、そこにつながる小道は、セザンヌがよく散歩をして山を描いた場所なのだそうだ。
アトリエの人が「日本人にとって富士山が大切であるように、私たちエクスの人間にとってサント・ヴィクトワール山は心の風景なのよ」と言っていたように、ここから眺めるサント・ヴィクトワール山は美しい。
セザンヌは葛飾北斎の「富嶽三十六景」に刺激されて、サント・ヴィクトワール山を何枚も描いたとも言われているが、確かにこの景色を見たら描かずにはいられないだろうと思った。絵心がある人は是非、スケッチして行く事をオススメしたい。
(田原昌)