文化と伝統が息づく、ウィーンの老舗巡り

古い歴史を持つハプスブルク家の街・ウィーンは、日本で言えば京都のような王室や貴族達を満足させる高級品を扱う老舗が多い。特に宮殿である「Schloss Hofburg(ホーフブルグ宮殿)」の周辺に集中している。

「Gelstner(ゲルストナー)」は、甘い物が大好きなウィーンの人たちが通うカフェの老舗。

コーヒーとケーキで何時間も談笑していそうな人々、いつもの席で新聞を読んでいるような老人もいた。ウィーンのカフェはゆっくりと時間を過ごすための場所なので、長く滞在しても文句は言われないのが貴族的な時間の過ごし方かも知れない。

「Demel(デメル)」や「Sluka(スルーカ)」も老舗の菓子店でカフェを併設。

デメルは「猫の舌」の形をしたチョコレートが有名。夏場はアイスクリームを販売中。

ちょうどワールドカップ開催期間だったので、ショーウィンドウがサッカー仕様になっていた。老舗でも遊び心を忘れない。

スルーカの方は動物を象ったマジパンがずらりと並んでいた。

アーモンドの粉を使って作られたマジパンは、日本人には馴染みが薄いがヨーロッパ各地ではよく見かけるお菓子。粘土細工のように様々な形を作りやすく、季節に合わせたものも出るのでチェックすると楽しい。

こちらの金と黒の重厚な外装の店舗は、ガラスや陶器を扱う老舗。1823年と書いてあるので、日本ではまだ文明開化もしていない頃からの店である。

この店の上部にあるが、ウィーンでは時折「双頭の鷲」が描かれていたりこの店のようにレリーフになっているものを見かけることが多い。そういう店には必ず「K.K.」「K.&K.」もしくは「K.u.K」と書かれている。それは「Kaiserlich und Königlich(皇室及び王国の)」の略で、王室御用達の店であることを意味している。日本で言う所の「皇室御用達」店なので、品質が保証されていると言っていい。

しかし「K.u.K」でなくても素敵な老舗は多く、そういった店舗の外装は古の雰囲気を残している。

こちらは細い路地を抜けた所に見つけた1837年創業の紙屋。おしゃれなポストカードなどの紙製品を多く扱っていた。

また、こちらは「Apotheke(薬局)」だが、看板を読むと、なんと創業が1551年であり1951年時点ですでに「400年記念」とある。日本では戦国時代真っただ中、鉄砲が伝来したような頃である。

こういった老舗がたくさん営業しているのが、王室のあったウィーンならでは。ハプスブルク家がなくなっても、老舗はその伝統と信頼を守り続けている。

(田原昌)