オーストリアの皇帝たちが各地で収拾したコレクションを収蔵するのに建設したという「Kunsthistorisches Museum(美術史美術館)」は、女帝マリア・テレジアの像を中央に「Naturhistorisches Museum Wien(ウィーン自然史博物館)」と対をなす建物となっている。
重厚な柱をくぐると、左右にチケット売り場がある。扉を押して中に入れば目の前に巨大な階段と立派な柱が現れ、中央に穴の開いている美しいドームが広がる。黒くてシックな柱は落ち着きを与え、また豪奢な雰囲気が味わえるフロアだ。
鑑賞は0.5階、1階、2階の3フロアで、絵画は1階、古代エジプトなどの博物館的展示品は0.5階にある。
絵画ではデューラー、レンブラント、ブリューゲル、アルチンボルド、フェルメールといった見逃せないものが多く、展示室の多さに1日の見学で足りるのかどうかというところ。絵画をゆっくりと鑑賞したいという人は、1日半か2日取ることをオススメしたい。
また展示室の入り口にはにはそれぞれローマ数字が書かれているので、マップで探しやすくなっている。
ここは普通の美術館ではなく、ハプスブルク家の力と富によって19世紀に完成した、建物自体も美術品のような場所である。なので、展示品ばかりでなく、その建物自体も鑑賞したい。天井も柱も、実に美しく凝った造りになっているのだ。
そんな建物内部のうち、中央階段の上部分にある壁には、クリムトの作品がある。柱と柱の間、柱とアーチを描く空間の三角形に、人物画が描かれている。
オーストリアに生まれ、オーストリア帝国時代に活躍した画家「Gustav Klimt(グスタフ・クリムト)」。ウィーンには彼の代表作品があることから、日本からのファンも多く訪れている。
普段なら何メートルも上に位置し、鑑賞するのが難しい彼の作品が、橋が架けられて目の前で見られるようになっていた。これはクリムトの壁画をじっくりと見る、大事なチャンスである。
橋が架けられているのは2018年の9月2日まで。クリムトファンはこの機会に是非訪れて欲しい。
たくさんのコレクションを見て疲れた時は、ドームの上部に位置するカフェでひと息。
宮殿の中で一服するような、贅沢な気分に浸れる場所だ。
美術史美術館は展示品と建物をとことん味わい尽くしたい、そんな素敵な美術館だった。
(田原昌)