南仏には多くのローマ時代の遺跡が点在している。なかでも、保存状態が世界一と言われているNîmes(ニーム)の古代闘技場は、是非一度は訪れてみたいローマ遺跡だ。
ローマ時代に使用されていた闘技場はフランス国内でもいくつかあり、ニームのものはさほど大きい方ではない。しかし、紀元1世紀に建造された物なのによく保存されており、今でも闘牛やコンサートなどが行われるという、現代にしっかりと生き続けている闘技場だ。
中に入り、アーチをくぐっていくと観客席に出た。それぞれに番号が振ってあって、今でも使っているという雰囲気が伝わってくる。
観客席はざっと見た所3段に別れており、身分によって分けられていたようだ。それぞれの観客席に向かうアーチや階段が、全く異なる趣向で出来ているのも、きっと身分の差なのだろう。
上の階に上がると、歴代のグラディエーター(剣闘士)の格好や武器を解説したパネルが並んでいた。一口に「グラディエーター」と言っても、時代によって流行の格好があったり、また対戦するグラディエーターたちの武器や防具がそれぞれ決められていたなど、初めて知ることが多かった。とても興味深くて面白い。
最上階からは、ニームの街が眺められる。高台に位置するわけではないので眺めが良いという訳ではないが、近隣の大聖堂や遠くの塔が見えた。
しかし、この最上階からの闘技場の眺めは迫力がある。場内に立っている人の大きさを考えると、ここでも十分熱狂的に観戦できるに違いない。
闘牛などのイベントがないときは、まさにグラディエーターたちが戦った舞台に立つことが出来る。実際に立ってみると、周りを囲む壁が非常に高く、逃げることが敵わない事を知った。
ぐるりと囲む観客席からの声援、叫び声…ここで死闘が繰り広げられるシーンを思い描けるのは、ニームならではの体験。チャンスがあったら、グラディエーターの気分になってローマ時代へと思いを馳せるのも一興だ。
(田原昌)