死海はアラビア半島北西部に位置する塩湖。
西側にイスラエル、東側にヨルダンがある。両国ともに死海の観光地化に力を入れている。私が訪れたのは、ヨルダン側。
首都アンマンから車で約1時間半前後の場所にある死海は、高級リゾート地として開発されていた。ちなみに、死海では対岸のイスラエルも望める距離感。
遥か彼方の異国に存在する秘境をイメージしていた私は、その整備されたリゾート空間に少し拍子抜けしたが、やはり贅沢な空間は心地良い。
中東のイメージから浮かぶ環境への心配がすべて払拭され、至極安全な環境の中、死海を安心して心から楽しむことができた。
期待と不安で胸をいっぱいにし、近づく死海。既に多くの人で賑わっており、浮いている姿もチラホラ見える。
だが、誰もが浮くのかどうかは入ってみなければわからない。問題は、海では浮き輪必須の私でも浮くのかどうかである。
ちなみに、死海は塩の濃度の高さから人が浮くことは周知の事実だが、その濃度は約30%。通常の海水の塩分濃度が3%なので、かなりの高さである。
近づくとわかるのだが、あちこちで塩の塊や結晶が目に入り、塩分濃度の高さがうかがえる。これなら浮くことができそう、と自分に言い聞かせ死海に足を踏み入れる。
夏場に訪れたこともあり、死海の水温も高く、水質もまろやか。とても穏やかな湖だというのが最初の感想。
「いざ浮かばん!」と、おそるおそる穏やかな死海に全身をゆだね、死海体験を楽しもうと思ったそのとき……。
浮いた!
いとも簡単に浮いたのである。むしろ浮力が高すぎて、ふわふわして体のバランスを取るのが難しい。ちょっとバランスを崩すとくるりとひっくりかえってしまう。
それはもう、もはや自分の身体とは思えないほどの浮力感だった。
今までに経験したことのない浮力の瞬間は、言葉で表現するのが難しいのだが、言い表すのであればとにかく「快感」。
浮遊時の感覚が心地良く、また静かな時が流れる穏やかな湖に包まれたその空間がこの上ない贅沢なのだ。
海抜-423mが創りだす景色の美しさも素晴らしく、ここにはこの上ない贅沢な時間があった。
死海を訪れる際は、ぜひ1日ゆっくりステイして、ここでしか見られないこの世のものとは思えない美しい景色を堪能してほしい。
帰る頃には身も心もデトックスされ、ふわふわと軽やかな気持ちになるはず。もしかしたら、人生観や価値観がくるりとひっくりかえるような何かを感じ取れるかもしれない。
(ゆめたび)
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