ジャケ・ドローとモーリス・ベシャール・バレエ。2つの極致の幸福な出会い

2014年11月8日、スイスの時計ブランド『ジャケ・ドロー(JAQUET DROZ)』と『モーリス・ベジャール・バレエ団(Béjart Ballet Lausanne)』のパートナーシップを記念した新作時計が、『モーリス・ベジャール振付ベートーヴェン「第九交響曲」』の公演とあわせ東京で発表されました。

この時計が息を飲む美しさ……なのですが、その前に。 時計とバレエ、2つの世界で特別な存在感を持つジャケ・ドローとモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)について少し説明します。

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■『ジャケ・ドロー』–天才への追憶と貴族的な美 『ジャケ・ドロー』の歴史は、1738年にピエール – ジャケ・ドローがスイスにある時計の聖地ラ・ショー・ド・フォンでその最初の工房を開いたことに端を発します。 ピエール – ジャケ・ドローは、時計制作のかたわらオートマタ(機械人形)の研究と制作に没頭し、「ドロワー」「ライター」「オルガン」など精緻な技術と芸術性をあわせ持つ作品を制作。

いまもって当時のオートマタ文化の頂点として語られています。 ジャケ・ドローの時計もまた、そのきらびやかな美しさと技術力で中国の皇帝にまで愛されましたが、残念なことに経営難におそわれ、工房は一度途絶えてしまいます。 しかし2000年、その美の世界の消失を憂えたスウォッチ・グループにより再興され、その名をいまに残すことになりました。

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現在のジャケ・ドローの時計も、革新的な技術を芸術にまで昇華したピエール – ジャケ・ドローのセンスを受け継ぎ、あくまで上品な華やかさとノーブルな風格をたたえています。 時計ブランドの中でも「知る人ぞ知る」と言われるジャケ・ドロー。 数々の高級時計の世界観が(価格の問題を除けば)善良な一般市民にまで共有される現代にあって、ジャケ・ドローはいまだ貴族的な美と本物エレガンスの存在を証明するような時計だと、筆者は感じます。

■『モーリス・ベジャール・バレエ団』–伝説の継承者たち

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モダンバレエに詳しくない方でも、モーリス・ベジャールの『ボレロ』は目にしたことがあるのでは。ラヴェルのボレロに乗せ、赤い円台の上で踊るソリストとそれを囲む群舞。クロード・ルルーシュ監督『愛と哀しみのボレロ』(1981)の中で演じられたジョルジュ・ドンのダンスは伝説となりました。

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肉体の圧倒的な雄弁さや、一種宗教的なまでに人間の根源的な部分をゆらすエネルギー。ベジャールの作品たちは、それまでのダンス限界を遥かに超えて、まったく新しい知覚の体験を世界にもたらしましたと言えるのではないでしょうか。

現在、モーリス・ベジャールの設立したカンパニー『モーリス・ベジャール・バレエ団(Béjart Ballet Lausanne)』が、彼の数々の作品と哲学を受け継いでいますが、ベジャール自身は惜しくも2007年に逝去。“20世紀最高の振付家”と呼ばれ続けたベジャールの存在はあまりにも大きく、巨星が墜ちて後のカンパニーの葛藤もまたとても大きなものだったと想像されます。

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しかし11月8日に東京で上演された『モーリス・ベジャール振付ベートーヴェン「第九交響曲」』は、カンパニーと、彼らが受け継ぐベジャールの思想がいまだ進化を続けていることを確信させてくれる、素晴らしい舞台でした。 50年前に振付けられた第九は、大勢のダンサーとオーケストラ、合唱団が1つの舞台で作り上げるスペクタクルで、あまりの壮大さに長らく再演がされなかった“幻の作品”。

今回は、モーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団のダンサーが集結し、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団を巨匠ズービン・メータが指揮した、どこまでも贅沢な舞台。魂を愉悦と驚嘆の世界に引きずりこまれるようなパワーに、ただただ圧倒されました。

■技巧の極致から、天上の芸術へ

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時計とダンス、動きのありようを極限まで突き詰める2つの文化の中で、”人類史に残る天才への追憶”を新たなパワーへと昇華し続けるジャケ・ドローとBBL。 東京での記者発表では、ジャケ・ドロー スイス本社副社長のクリスチャン・ラトマン氏(写真右)と、モーリス・ベジャールバレエ団社長のジャン=ピエール・パストリ氏(写真左/ 写真中央はアーティストのステファニー・バルバ氏)が登壇し、2つの芸術の「奇跡的な出会い」を語ってくれました。

狂気のような精緻さを極め、その先の官能と美の核心を手にした2人の天才。その孤高の芸術性を受け継ぐ者としての自覚と、さらなる高みへの情熱。そんなところに両者の共通性があるのではないでしょうか。 2つの大きなエネルギーの融合に今後も期待が高まります。

■『Le vautour(ハゲタカ)』と『Le chef(指導者)』

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そして、大変ながらくお待たせしました。 今回発表された新作『Le vautour(ハゲタカ)』と『Le chef(指導者)』です。 文字盤に設けられた大きな余白に表現されるのは、水彩画家ステファニー・バルバのスケッチ。ベジャールの有名な2つのポジションを描いています。

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肉体の躍動感と生命力をそのまま写し取るような筆遣いと、時計の美しさの調和に息を飲むような快作です。 BBLのソリスト、ジュリアン・ファヴローの踊りと、ステファニー・バルバのデッサンの息を飲むようなセッションが動画で公開されています。

[youtube]http://youtu.be/lnO-rSOPNUI?list=PLlAIAS63-WaAIDCtgBkK5MMULGH0kjRrL[/youtube]

記者発表の場で  副社長はこの時計を、「すべての芸術を愛する人の時計」であると発言しました。たしかにこの動画を見れば、この時計が単なる装飾品ではなく、美と人間の本質を追求するエネルギーの凝縮であることがわかるのではないでしょうか。 この2作はそれぞれ世界で28本ずつしか販売されないという貴重なモデル。

ブティックに足を運んだ際には、じっくり眺めてその芸術への情熱を感じてみてはいかがでしょうか。 ちなみに銀座にあるジャケ・ドローのブティックは、時計のエレガンスにふさわしい優美な空間なので、大人の休日の、ラグジュアリーなお散歩コースにオススメです(大きな声では言えませんが)。

(くぼきひろこ)

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