東京・文京区千駄木にある文京区立森鴎外記念館は、鴎外の邸宅・観潮楼跡地に建つ記念文学館だ。同館では、4月12日(土)から6月29日(日)まで、特別展「本を捧ぐ―鴎外と献呈本」を開催。
同展では、鴎外に贈られた本、鴎外が贈った本の実物約40冊を展示。献呈本を手掛かりに、鴎外の幅広い人物交流と愛書家としての姿を紹介する。
鴎外所蔵の献呈本を中心とする特別展
森鷗外の居宅・観潮楼には、かつて文学・医学・哲学・歴史・自然科学・美術など多岐にわたる蔵書であふれ、鴎外の豊かな知識を支えていたとされる。
蔵書には自ら買い求めた本以外に鴎外に贈られた、いわゆる献呈本も含まれている。鴎外に著書を贈ったのは多岐にわたる人々でその目的も様々だ。
北原白秋・木下杢太郎・石川啄木など若い文学者は、それぞれの著書に鴎外への敬慕をうかがわせる献辞を記し、評論家・内田魯庵や美術史家・大村西崖は鴎外が関心のある分野の本を贈った。
一方鴎外も、夏目漱石や与謝野寛・晶子などの文学者に自著を贈り、家族にもプレゼントした。鴎外による本の贈答は、活躍の場と人脈が広がるとともに、その数も増えていったようだ。
特別展「本を捧ぐ―鴎外と献呈本」では、東京大学総合図書館の鴎外旧蔵書コレクション「鴎外文庫」を中心に鴎外に贈られた本。そして『鴎外日記』や書簡をたよりに鴎外が贈った本を展覧する。
特別展の展示構成と展示資料の一部を紹介
第一章は、“鴎外に贈られた本”と題し、鴎外への献辞や著者の署名などが確認できる献呈本を始めとした約30冊の鴎外に贈られた本を紹介する。
ハンス・マイヤー『世界旅行記』(1885年)は、ドイツ留学時代の友人で軍医のヴィルケより贈られた。見返しに「Mori Rintaro kunni teiju」とローマ字で記される。
石川啄木『一握の砂』(東雲堂書店・明治43年)は、東京大学総合図書館蔵の啄木における第一歌集。鷗外への献呈本には「森先生に捧ぐ 著者」と記されている。
第二章は、“鴎外が贈った本”と題し、鴎外が寄贈した自著や家族にプレゼントした本、鴎外が序文を寄せた本など約10冊を展覧。さらに日記や書簡などの記録をたよりに、鴎外が贈った本を紹介する。
北原白秋訳『まざあ・ぐうす』(アルス・大正10年)は、鴎外の次女である杏奴の旧蔵。白秋による鴎外への献呈本に、鴎外が「アンヌに 森林太郎」と書き添えがある。
夏目漱石筆『鴎外宛葉書』(大正4年9月10日)は、鴎外が漱石に贈った詩歌集『沙羅の木』に対する礼状だ。
また、展覧会初出展資料として、鴎外『仮名遣意見』(私家版・明治41年・川島幸希蔵)を出展。同書は、臨時仮名遣調査委員会での仮名遣い改定に対する鴎外の演説の速記を私家版として印刷。鴎外が大正9年、文学者・小島政二郎に「最後ノ一部」を贈ったもので、署名の下には鴎外の花押がみられる。
生涯において本を最も大切にしたという森鴎外。この特別展で、献呈本を中心にうかがい知れる人物像と幅広い人物交流の様を体感しよう。
特別展「本を捧ぐ―鴎外と献呈本」
会場:文京区立森鴎外記念館
所在地:東京都文京区千駄木1-23-4
会期:4月12日(土)~6月29日(日)
休館日:4月22日(火)・5月26日(月)・5月27日(火)、6月23日(月)・6月24日(火)
開館時間:10時~18時 ※最終入館は17時30分
料金:600円
公式サイト:https://moriogai-kinenkan.jp/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000075036.html
(高野晃彰)