北海道の開拓時代の意思を伝える「ファームヴィラ拓」がグッドデザイン建築部門受賞

北海道東部・中標津にある宿泊施設「ファームヴィラ拓(たく)」が、2024年度グッドデザイン賞建築部門を受賞。開拓時代から残る道に沿った配置や極寒の地でのオフグリッド実現が高く評価された。

2021年のブランディングCI/VI部門に続き2度目の受賞となる今回は、札幌の設計事務所ATELIER O2の大杉崇氏との共同受賞。

開拓の精神を宿泊者に継承する「ファームヴィラ拓」

木造平屋建ての「ファームヴィラ拓」は、中標津町の竹下牧場が運営する木造平屋建ての1棟貸しヴィラだ。厳しい自然を目の当たりにしながら「何も無い場所」に身を置くことに豊かさを見出してほしいとしている。

2023年6月に牧場敷地内にオープンした同施設には、2024年9月時点までに約60組が宿泊。スタートアップの企業研修・勉強会、大手商社の合宿などに活用されたほか、親子三世代での利用者も。「一生に一度は鮭の遡上を見てみたい」という老夫婦のニーズに対し、牧場主自らのネットワークを活かして応えたケースもあった。

「ファームヴィラ拓」最大の魅力は「開拓を、みんなのものに」というブランドコンセプトにある。開拓の精神を宿泊客にも継承し、それぞれに何か新しいことを始める「開拓」の促進を目指す。

開拓時代の道に寄り添い木々に溶け込む三角屋根

グッドデザイン賞でも評価された建物の配置は、開拓時代に切り開かれた古い道に沿ったもの。特徴的な三角屋根は、「木々の枝葉に溶け込みながらも、地を切り開く鋭い意思にも、開拓の祈りのシルエットとも感じ取れ」ると賞賛された。

建築資材には地元北海道産をメインに使うことで地域の木材産業に寄与。外壁はカラマツの羽目板、床はタモ材、構造材はカラマツの集成材、木質繊維断熱材にも道産材を使用した。

ガラスに囲まれた開放感の高いラウンジスペースからは、窓の外に広がる牧草地を眺められる。冬の夜に薪ストーブの揺らめく炎を見つめていたら、日々の慌ただしさも忘れられそうだ。

高気密高断熱や透湿性の高い紙クロスの採用などで居心地の良さを追求した客室は、あえての「カーテンなし」。太陽の光とともに自然のリズムで目覚められる。

また、三角屋根の梁は室内からも一部が見えるデザイン。万が一スガモリ(雪解け水が屋根内部にしみこむこと)が発生しても、構造がダメージを受けないよう配慮が施されているという。

宿泊施設だが、このヴィラに食事の用意はない。中標津の食材を使って料理を楽しんでほしいという思いから、キッチンには調理器具一式・調味料がそろう。また、ウェルカムフードとして竹下牧場のパンやチーズがプレゼントされる。

希望の食材については、スタッフに相談すれば適切な店舗や生産者を紹介してもらえるとのこと。2泊以上宿泊の場合、ピザ作りなどの各種体験メニューを予約可能だ。

グッドデザイン審査委員からも「ゼロからイチを創り出す、イノベーティブかつクリエイティブなデザイン思考を呼び覚ます」と評価された「ファームヴィラ拓」。マイナス20度を下回ることも珍しくない中標津の冬にこそ、何かを「開拓」できそうだ。

ファームヴィラ拓
所在地:北海道標津郡中標津町字俣落63
公式サイト:https://taku.takeshita-farm.jp/

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000136477.html

(IGNITE編集部)