FIFAワールドカップの熱戦の舞台として世界中の注目を集めているカタール。同国のコンテンポラリー・アートの舞台に、日本を代表する稀代のアーティスト・草間彌生氏の作品が登場した。
文化活動プロジェクト「カタール・クリエイツ」の一環として、首都ドーハのイスラム美術館敷地内に大規模作品「My Soul Blooms Forever」を設置。2023年3月1日(水)まで披露される。
不世出の前衛芸術家・草間彌生氏
一目見たら忘れられない、水玉模様のカボチャの立体造形で知られる前衛芸術家・草間彌生氏。
1929年、長野県に生まれた草間氏は、地元松本市での初個展などを経て現在に通じる独創的かつ唯一無二のスタイルを確立。1960年代半ばのニューヨークのアートシーンを席巻する。
その活動分野は、絵画からパフォーマンス、室内展示、屋外立体造形インスタレーション、文学作品、映画、ファッション、デザイン、既存の建築物への介入にまで及び、従来の枠組みでは捉えきれない。
2022年12月時点でも英国、カナダ、香港でそれぞれ個展が同時進行しているなど、世界的アーティストとして活躍し続けている。
今回の展示のハイライトは、5本の花で構成される「My Soul Blooms Forever」(2019年)。独自の色彩感覚が存分に発揮された奇抜な花が、高さ183cm~274cmにまでそびえる。
米国外では初展示となる「Dancing Pumpkin」(2020年)は、中央から490cm以上にわたるブロンズの房を広げており、まるで動いているかのような躍動感のある作品だ。
「Ascension of Polka Dots on the Trees」(2002/2022年)は、ドーハのコーニッシュに沿った小道の両側に植えられている数十本のナツメヤシに施された作品。
そのほか米国外では初公開となる「I Want to Fly to the Universe」(2020年)や、LEDライトを用いた「Infinity Mirrored Room – Dancing Lights that Flew Up to the Universe」(2019年)などが登場。
カタールでは初めて公開されるサイズの作品もあり、在住者はもちろんFIFAワールドカップで世界中から訪れる人を楽しませる趣向となっている。
屋外美術館体験の場に変身したカタール
企画したカタール博物館は文化財や史跡の保存といった学術活動だけでなく、芸術文化機関として多くの現代美術家たちとつながりをもち、パブリックアート・プログラムを推進している。
年間を通じてさまざまなツアーやトーク、パブリックアート保護キャンペーンなどのプログラムを実施しているという。
さらに同展示は、ルイ・ヴィトンの独占スポンサーシップで開催されている。実用性を保ちながらもエレガントかつクリエイティブであることを重視し、「Art of Travel(旅の芸術)」を掲げる同ブランドは、建築家、アーティスト、デザイナーたちへ広く門戸を開いてきた。
草間氏による9つの立体造形とインスタレーション、そしてカタール国内外の著名アーティストによる新しいパブリックアート40点で、カタールはいま、国中が屋外美術館体験の場に変身している。
日本のアーティストが生み出すエネルギッシュな作品群が、イスラムの文化の中でどのように受け止められるのか楽しみだ。
(SAYA)