西陣織老舗の細尾12代目細尾真孝氏が、美術家であり自然布の蒐集家・研究家として知られる吉田真一郎氏と共同で、テキスタイルギャラリー「真妙庵(しんみょうあん)」を京都・御所南エリアに10月28日(金)にオープンした。
アーカイブ資料としても一級品の貴重な自然布
真妙庵は、19世紀(江戸~明治時代)につくられた大麻・苧麻繊維の貴重な自然布を、細尾真孝氏と吉田真一郎氏の監修と選定により紹介するギャラリー。これらの作品に用いられる布は、吉田氏が代表を務める近世麻布研究所の協力により、博物館同等の精密な繊維検査によって糸の素材を明らかにした貴重な資料で、手績み糸、自然染色、手機によって作りあげられた19世紀の手仕事を体現する美しい布だ。
真妙庵では、糸の績み方や織の手加減など、布の微視的な美しさに焦点をあて、様々な自然布を紹介する。表具されたもののほか、多数の裂を揃え、貴重なアーカイブ資料として見ることができる。さらに真妙庵では、吉田氏の長年にわたる大麻繊維と糸の研究から生まれた、過去と未来をつなぐファブリックブランドmajotae(まよたえ)の商品を取り扱う。
細尾真孝氏は、1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開している。
吉田真一郎氏は、20代から絵画制作を始める。77年に西ドイツへ渡り、現代美術家のヨーゼフ・ボイス氏に出会い、帰国後、ボイス氏の影響から古美術や民俗学を独学で勉強し始める。江戸時代の芋麻布、大麻布の繊維と糸の研究を発表してきた。
1800年代の大麻・苧麻の自然布
真妙庵では、現代の機械紡績とは異なる19世紀以前の手法―手績みによる糸を用い、手機によって織られた美しい布によって構成された作品を紹介。
これら同じ大麻繊維でできた糸一つをとってみても、大麻の苧(お)の種類、糸の太さ、撚りの有無などによって微細な差が生じる。また織の加減や自然染色の個体差によっても表情に差異が生まれる。これらの糸、織、染めによる微視的な差にこそ、布の真の美しさが宿るものであると考える。
真妙庵では、表具されたものと併せて、19世紀の裂を実際に手にとって見ることができる。博物館同等の繊維検査によって素材を明らかにし、顕微鏡の拡大写真と併せて紹介することで、現代とは在り方の異なる布の美しさを感じ取ることができる。
過去と未来をつなぐファブリックブランドmajotae
歴史のなかに埋もれかけていた大麻布をもう一度、人々の生活に取り戻し、未来へつなぐために吉田氏が取り組んでいるのが、ブランドmajotae。
吉田氏の長年にわたる、大麻繊維と糸の研究により、100%の大麻繊維を機械で織ることに成功。今までは、19世紀以前の手法である、手績みによる糸と、手機でしか織ることができなかった、極上のテクスチャーを持つファブリックが実現した。真妙庵では、majotaeプロダクト第一弾として、Taiga Takahashiによるタイムレスなシャツコレクションを展開する。
布は古代より、人の生活の身近にありながら、人間の美意識を表現するために様々な技術的、技巧的進化を遂げてきた。時代を超えた真の布(妙)が、多くの人々にインスピレーションをもたらす場(庵)となることを目指す真妙庵。京都に行ったら立ち寄りたいギャラリーがまた一つ増えた。
テキスタイルギャラリー「真妙庵」
所在地:京都市中京区少将井町229-2 第7長谷ビル1階
営業日:木・金・土・日 11:00~18:00
majotae:https://www.majotae.com/
(MK)