カリフォルニアのナパ・ヴァレーといえば、ワイン好きなら知らない人はいないワインの名産地。そのナパ・ヴァレーで、日本の白ブドウ品種“甲州”のワインが誕生した。
「Napa Valley Koshu」誕生までの背景やその味わいを紹介する。
第三の品種の期待が高まる「ナパ・ヴァレー・甲州」
カリフォルニア州ナパカウンティの大火事後、焼け焦げた葡萄木にカリフォルニア大学デービス校に保管されていた甲州ブドウを接木。2021年に初の“Napa Valley Koshu”ブドウを収穫したことにより、新たなワイン「ナパ・ヴァレー・甲州」が誕生した。
“Napa Valley Koshu”葡萄を100%使用した「ナパ・ヴァレー・甲州」は、⾊、香り、⾵味も、⽇本の甲州ワインとは⼀味違う、別の品種の様に⽣まれ変わっている。
世界の白ワインの⼆⼤品種、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランに次ぐ品種に成り得る、新しいワイン品種として注目されているという。
ナパの山火事がもたらした奇跡のストーリー
2017年10⽉、ナパは地獄のような⼤⼭⽕事に巻き込まれた。育てられていた葡萄、カベルネ・ソーヴィニヨン(約400本)のほとんどが焼け焦げたが、幸運にも、葡萄の⽊は燃え尽くすことはなく、根と本体の⼀部分は生き残っていた。
復旧作業に取りかかっていた時、甲州葡萄の苗が昔からカリフォルニア⼤学デービス校に保管されているという情報を⼊⼿。その葡萄の枝を⼿に入れることができた。
焼け焦げた葡萄⽊に接⽊をし、甲州品種を育てる計画を試みる。⾼級葡萄のカベルネ・ソーヴィニヨンをあきらめ、アメリカではほとんど無名の品種「Koshu」を育てることに挑戦。「Napa Valley Koshu”」のプロジェクトをスタートさせた。
95年の年月を超えて、“Napa Valley Koshu”が誕生
葡萄が実際に実るのか、どんな実がいつ頃できるのか、 ワインを造れるだけの量と品質の葡萄ができるのか。疑問と不安の中、「良いワインを造るには、良い葡萄が不可⽋」「良いテロアールがなければ、良い葡萄はできない」というあるワイナリーのオーナーの⾔葉を信じ、ナパが世界で⼀番適したテロアールだと信じて、葡萄を実らせる作業を続けた。
そして2021年の秋、感動的にも、まだ⾮常に少ない量ではではあるが、初の「Koshu」葡萄を1トンほど収穫することに成功。「Koshu」葡萄の苗が⽇本の宮崎⼤学よりUC Davis(カリフォルニア⼤デービス校)に送られて来てからなんと95年⽬にして、“Napa Valley Koshu”が誕⽣した。これはまさに⼭⽕事がもたらしてくれた奇跡の贈り物である。
なお、「ナパ・ヴァレー・甲州」は、特に⽇本料理、鮨、天ぷら、懐⽯料理などとのペアリングが最適だという。
新鮮で多彩な素材の味わいを活かす日本料理は、世界無形文化遺産に“WASHOKU”が登録されたことで世界的なトレンドになっている。和食とワインのマリアージュの可能性は、「ナパ・ヴァレー・甲州」の登場とともに大きく広がっていくことだろう。
市場に出回る日を楽しみにしたい。
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(MK)