春を告げる奈良・東大寺二月堂のお水取り

奈良東大寺二月堂の「お松明」、「お水取り」とも呼ばれる「修二会(しゅにえ)」は正式名称「十一面悔過(じゅういちめんけか)」といい、3月1日から本行が始まり15日に満行を迎える。

十一面悔過とは、日常に犯しているさまざまな過ちを二月堂のご本尊である十一面観世音菩薩の宝前で懺悔(さんげ)することを意味するそう。

期間中、毎晩19時(12日は19時30分・14日は18時30分)に行われる「お松明」は、長さ約7メートルにもなる松明を童子(どうじ)と呼ばれる人がかつぎ、練行衆はその松明の火を道あかりとして二月堂のお堂へ入っていく。

行中の3月12日深夜(13日の午前2時)には、若狭井(わかさい)という井戸から観音さまにお供えする「お香水(おこうずい)」を汲み上げる「お水取り」の儀式を行う。

週末の混雑もさることながら、13日に行われるお水取りの前夜である12日はもちろんのこと、短い時間内にお松明が連続して上がっていく最終日の14日も混雑が予想される。

間近で観覧したい場合は早めに出向くことが必須。

混雑しはじめると身動きがとれなくなること、夜間のため底冷えすることを鑑み、暖かく着込み事前にトイレは済ませておこう。

昨年の3月14日に訪れた際は、17時ごろ宿からタクシーを手配して東大寺に到着したがすでに混雑が始まっており二月堂間際には近寄れない。規制のロープが張られた前方に陣取ることができたのが幸いだ。

徐々に空が濃紺に染まり始めるとフラッシュ撮影の禁止や注意事項などのアナウンスが日本語・英語・中国語・韓国語で放送される。

照明が落とされ厳粛な雰囲気が漂ったと思うと舞台の左手の階段から松明が上がってくる。

夜のとばりの中、松明の炎が舞台左手から右手に移動していくのは遠くからでも幻想的。

次々に現れる松明を持った童子が観客の頭上を明々と照らしながら舞台を移動する様は圧巻だ。

やがて10本の松明が舞台に並びそれぞれが滝のように火の粉を落とす。

火の粉がかかるほどの場所では落ちてくる火の粉の大きさに比例するようにどよめきが起きる。

修二会が終わるころに春が訪れるといわれるようにいにしえから奈良の人々に親しまれている行事である。

しかしながら近年はショーを見にきたかのような拍手をする輩が増えた。厳正な儀式を拝見するという元来の観点からも思わず出る歓声は仕方ないとしても拍手喝采は遠慮してほしいと思う人々も多くいることを知ってもらいたい。

 

東大寺所在地:奈良市雑司町406-1

アクセス:JR奈良駅・近鉄奈良駅から市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車徒歩5分

 

(小椚萌香)