塩原温泉郷は古くから塩原十一湯(じゅういちとう)と呼ばれ、大網(おおあみ)・福渡(ふくわた)・塩釜(しおがま)・塩の湯(しおのゆ)・畑下(はたおり)・門前(もんぜん)・ 古町(ふるまち)・中塩原(なかしおばら)・上塩原(かみしおばら)・新湯(あらゆ)・元湯(もとゆ)という11の湯本がある。
今回は元湯に3軒ある旅館のうちの「大出館(おおいでかん)」を紹介しよう。大出館は日本唯一の真っ黒な温泉「墨の湯」と「五色の湯」を持つ秘湯の宿。
墨の湯は鉄分を多く含み、墨を溶いたような黒い色をしている。いっぽう五色の湯は天候や気候によりエメラルドグリーンや乳白色、灰色などに色が変化する。どちらの温泉も掛け流しで温泉成分が非常に濃く、温泉を楽しみに日帰りで利用する客も多い。
高台に建つ大出館の玄関は3階にあたり、同フロアに屋上展望台を設けている。
客室は2階と1階に26室。エレベーターがあるので上下階への移動も苦にならない。
部屋は居間と障子で区切られた広縁があり、窓からは自然豊かな山々の絶景が望める。
大浴場は8つの浴槽を擁し、すべてが源泉100%の掛け流し。
平家かくれの湯・御所の湯・鹿の湯・墨の湯・岩の湯(露天風呂)は混浴。高尾の湯・子宝の湯(露天風呂)の2か所が婦人風呂。墨の湯と鹿の湯は女性専用の時間帯を設けるので女性でも安心して黒い温泉の湯浴みが楽しめる。
空いていれば自由に入れる貸し切り湯があるのもうれしい。
食事は夕食、朝食ともに部屋出し。地産地消を心がけ山菜や川魚、旬の地元の野菜を使った素朴な料理とのことだが、温かいもてなしを感じる料理で品数も多くおいしくいただける。
大出館の温泉は成分が非常に強く温泉の性質上、ほとんどの金属はすぐに腐食してしまう。電化製品もテレビは年間約50台、エアコン、暖房、冷蔵庫なども各20台近く壊れてしまうという。普通に使用しても電化製品の寿命は長くて1年。館内のトイレがシャワートイレでないのも無理はない。
源泉100%にこだわり建物の傷みや設備などに関しても相当な努力を強いられる日々が想像に難くない。温泉好きに永く愛される湯宿である。
住所:栃木県那須塩原市湯本塩原102
大出館 公式サイト:https://www.ooidekan.com/
(小椚萌香)