一人で一番多くの音楽家を撮った写真家 木之下 晃のポートレイト作品展『石を聞く肖像』

生涯を通して、“音楽を撮る”ことにこだわって撮影活動を続けた木之下 晃。

撮影した作品群は、世界のクラシック音楽家の演奏する内面を凝視していると評され、「彼によって音楽がフィルムに刻印された」と語られており、間もなく逝去から丸3年がたとうとしている。

ローラン・プティ(振付家) 1995年11月26日撮影 「とっておきのポーズを…」

そんな音楽家を撮りつづけた写真家、木之下晃のポートレイト作品展『石を聞く肖像』が半蔵門のJCIIフォトサロンにて2017年10月3日(火)~10月29日(日)に開催中だ。

 

クラウディオ・アバド(指揮者) 1996年10月17日撮影 「ちょっとこんな芸当もできるかな。」

 

本展示は、世界的な舞台芸術家たちに卵のような乳白色の石を渡し、自由にポーズをとってもらって撮影したポートレイト写真集『石を聞く肖像』(飛鳥新社、2009年)から約70点を展示。木之下は50代半ばにフィンランド政府から2度目の撮影招聘を受けた際に、「違う視点で撮影を」と思索する中で目に飛び込んできたのが、約20年机上に置いていたこの石だったのだ。

ダニエル・ハーディング(指揮者) 2001年11月26日撮影 「僕はフットボールの選手になりたかった。」

ひとつの小さな石を通して、芸術家たちの自由で伸びやかな様子を垣間見ることができる。

デジタル写真が簡単に撮影、破棄できる時代にあって今、アナログに拘った視点に立ち返るのも芸術の秋の試みにぴったりだ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

マルセル・マルソー( パントマイマー) 1998年9月23日撮影 「あなたのために、石のマイムを踊りましょう。」

【木之下 晃 作品展「石を聞く肖像」】

協   力:株式会社 木之下晃アーカイヴス (http://www.kinoshita-akira.jp)

期   間:2017年10月3日(火)~10月29日(日)

開館時間:10:00 ~ 17:00

入 場 料:無料

休 館 日:毎週月曜日(祝・祭日の場合は開館)

展示点数:約70点(全作品モノクロ)

主   催:JCIIフォトサロン 東京都千代田区一番町25番地 JCII ビル

木之下 晃(きのした あきら) 1936-2015
1936年長野県生まれ。諏訪清陵高校、日本福祉大学で学ぶ。中日新聞社を経て博報堂に入社。広告写真を撮る一方で、1960年代より、ポップスからクラシックまで幅広く音楽の撮影を開始。以来一貫して『音楽を撮る』をテーマに撮影活動を続けた。1974年にフリーとなり、次第にクラシック音楽に的を絞って、「世界の音楽家」「世界の劇場」「作曲家の足跡」「音楽家のオフステージ」「ポートレイトシリーズ~石を聞く肖像」など、多彩な角度から音楽を記録。その写真からは「音楽が聴こえる」と、ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタインなど、時代を代表する巨匠達からも高い評価を得ていた。フィルムでの撮影・現像に最後までこだわり続け、生涯に撮影したフィルムは3万本に及ぶ。1971年日本写真協会賞新人賞、1985年第36回芸術選奨文部大臣賞、2005年日本写真協会賞作家賞を受賞、2006年紺綬褒章受章、2008年新日鉄音楽賞特別賞を受賞。写真集は『世界の音楽家・全3巻』(小学館)『The MAESTROS』(小学館)『石を聞く肖像』(飛鳥新社)など生涯約50冊を出版。写真展の開催は約100回を数える。2015年1月12日、死去。享年78。