世界最大規模の調査「新型コロナウイルスによる消費習慣への影響」

新型コロナウィルス感染拡大により在宅時間が長くなったアジア各国では、食生活が大きく変わり始めているという。

ニールセンは3月中旬、70以上の国と地域で、新型コロナウイルス感染拡大が消費習慣にもたらす影響についての世界最大規模の意識調査を実施した。このうち、日本を含むアジア11の市場の動向の概要を要約して紹介しよう。

日本での調査は、インターネット調査、全国対象、サンプル数526名、対象者条件18歳~65歳の男女、調査時期2020年3月13日~16日で実施。

■食事の変化

アジアの消費者に対する調査結果からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を通じて、消費者の食生活が恒久的に変わる可能性があることが見えてきている。 アジアの11の市場のなかでは、日本の消費者の食習慣が変化の兆しが最も少ないことが分かった。

特に香港、韓国、タイで、持ち帰り用食品と食品の宅配の需要が高まっていることも分かっている。テイクアウトが浸透し、その利便性が重視される傾向が、レストランやその他ビジネスに与える影響は明白だが、調査結果からは、新しいレベルの需要を満たすため、小売企業による店舗在庫の扱い方にも影響が出ることが明らかになっている。

ニールセン東南アジア総責任者のヴォーン・ライアンは、下記のように述べている。

「当初は『突然変異的行動』かと思われましたが、この傾向は2カ月以上にわたり確認されています。シンガポールを積極的に食事の宅配を採用している国とし、日本がそうでない国とするなら、以前よりも多くの国がシンガポール型に近づいていることがわかります。」

家庭内での消費

多くのアジア市場では、1月の終わり以降、FMCG全体で週平均売上が前年に比べて毎週+20~25%を超えている。消費者は何度も同じ店に来店しており、この行動は『パニック買い』を通り越していると言える。

消費者が『外出先での過ごす時間』から『より安全な家庭内での消費』へと移行しているようにも考えられる。

■テイクアウトやデリバリー

外食から食品のデリバリー、テイクアウト、料理への移行は、各国の消費習慣の伝統だけでなく、国ごとの検疫や隔離などのウイルス対応策の影響も受けるため、地域により微妙に異なっている。

例えば、日本では食品のデリバリーはほとんど増えていないが、タイはこのチャネルに大きく依存している。これは短期間でナビゲートしたい企業にとって重要なポイントだ。

食文化の違いや、労働環境の違いもあるが、元来、日本に比べると外食率が高かったアジア圏。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響で「家」「家庭」で食事を摂ることの重要性に、改めて目を向け始めたようだ。早朝から深夜まで食事ができる店が立ち並んでいたり、毎晩多くの人が集まる夜市など、アジアの街の景色も変わっていくのかもしれない。

(冨田格)