監督・齊藤工、主演・北村一輝がHBOアジア・オリジナルズ「フォークロア」で東京国際映画祭に登場

11月5日まで、TOHOシネマズ六本木ヒルズを中心に開催中の「第32回東京国際映画祭」。

10月30日には、HBOアジア・オリジナルズ作品であるホラー・アンソロジー「フォークロア」より「TATAMI」と「母の愛」が上映された。上映後には「TATAMI」の監督・齊藤工氏と主演・北村一輝氏が登壇して来場者によるQ&Aが行われた。

その模様と、「フォークロア」シリーズをご紹介しよう。

10月28日(月)東京国際映画祭オープニング「レッドカーペット」より。(左)ジョコ・アンワル監督(中央)齊藤工監督(右)北村一輝氏

◾︎HBOアジアとは

「セックス・アンド・ザ・シティ」「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」「ゲーム・オブ・スローンズ」など世界中で話題になるドラマシリーズを作り続けているのが、アメリカのケーブルテレビ放送局HBO。

そのHBOのアジア部門として1995年シンガポールに開設したのがHBOアジア。

HBOアジアでも主に中華圏に向けてオリジナル・ドラマシリーズを制作しているが、近年、日本とのコラボレーション作品が増加傾向にある。今年Huluで配信開始された「ミス・シャーロック」(竹内結子・貫地谷さおり主演)もHBOアジア・オリジナルズである。

◾︎ホラー・アンソロジー「フォークロア」

民間伝承を意味する「フォークロア」と名付けられたこのシリーズは、インドネシア・日本・韓国・マレーシア・シンガポール・タイの6か国を舞台に描かれる、6エピソードからなるホラー・アンソロジー。多数の受賞歴を持つシンガポールの映画監督エリック・クーが中心となり制作され、アジア各国の多様な監督がそれぞれの土地に深く根ざしたオカルト信念的な神話や民間伝承を現代的に昇華させた物語となっている。

日本から監督として参加したのは、齊藤工氏。昨年「第31回 東京国際映画祭」で上映されたエリック・クー監督作品「家族のレシピ」撮影中に、エリック氏が齊藤氏にこの企画を持ちかけたそうだ。
※監督としての表記は「齊藤工」、俳優としての表記は「斎藤工」

「畳」が象徴する日本文化固有の “恐怖”を描いた齊藤監督の「TATAMI」には、アジアでの人気・活躍も目覚ましい北村一輝が主演を務める。

日本ではスターチャンネルで11月10日に全6エピソードの放送が決定しているが、それに先駆けて齋藤監督の「TATAM」とインドネシアのジョコ・アンワル監督の「母の愛」が、第32回東京国際映画祭「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA ♯06 ファンタスティック! 東南アジア」部門で上映された。

「TATAMI」の齋藤工監督

「TATAMI」主演の北村一輝氏

◾︎「TATAMI」「母の愛」上映後のQ&A

(左から)齋藤工監督、北村一輝、ジョコ・アンワル 監督

エリック・クー監督の人脈で集められたアジア各国のディレクターたちが作った6本のホラー映画アンソロジー「フォークロア」。その中から、インドネシアのジョコ・アンワル 監督作品「母の愛」と、日本の齋藤工監督作品「TATAMI」が上映。多くの観客が詰めかけチケットは完売。上映後には、主催者側の想定を越える多数のマスコミが集まったQ&Aが開催された。

まずは「母の愛」のジョコ・アンワル監督。役者としてもホラー作品を中心に様々な監督の作品に出演しているジョコ氏は「アジアのホラー王」と異名を持つ。

©2018 HBO Pacific Partners, v.o.f. HBO and HBO Asia Originals are service marks of Home Box Office, Inc. FOLKLORE is a service mark of HBO Pacific Partners, v.o.f. Used with permission. © 2019 HBO Asia. All rights reserved.

ジョコ・アンワル「私のデビュー作が2005年に東京国際映画祭で上映されたのですが、それが私の初めての国際映画祭でした。ですので、東京国際映画祭は私にとってとても特別な場です。

インドネシアには怖いお化けの伝承があります。大変おおきな胸を持っている女性で、親に愛されない子供をさらって自分の胸の中に隠してしまうお化けなのです。子供の頃に、僕が暗くなるまで外で遊んでいると母から「お化けにさらわれちゃうわよ」と怒られて怖い思いをしたのが印象に残っています。

この映画の中に出てくる母親は、僕の母がモデルになっています。母はとても厳しく怖かったのですが、僕を本当に愛してくれました。そして映画の主人公の男の子は僕がモデルです」

続いて「TATAMI」の齋藤工監督。

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齋藤工「家族のレシピ」の撮影中にエリック・クー監督からこの企画にお誘いいただきました。一つのテーマでアジア各国の監督が腕を競うという「フォークロア」の構成自体が、スポーツのアジア大会のように思えて興味を持ち、「ぜひトライしたい」と二つ返事でお答えしました。

made in japanの伝承というテーマで浮かんできたのが畳でした。畳は英単語はなく、日本語の発音のまま「TATAMI」という表現しかない。この言葉はとても強いと思いました。

今は違うものもあるようですが、畳は表面はい草で中は藁なんですよね。人型の藁人形に宿るもの、それを釘で打つというものに対して、畳1畳分に宿る念みたいなものを題材にしたいと脳裏によぎったんです」

「TATAMI」の主演、北村一輝氏と齋藤監督は20年前からの旧知の仲だとか。

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北村一輝「20年前に齋藤監督がまだ俳優になる前に「映画を撮りたい」と話してくれたことがあって、その時はぜひ俺も呼んで欲しいと言ったことが実現した作品なので、特別な思いがあります。

(齋藤組の現場で)俳優という仕事を理解してくれているので、準備の時間をしっかり確保してもらえたのは嬉しかったです。僕たちにとって一番大事なのは、脚本をどういう風に読み込んでいくのかとか、どういう風に見せて行きたいのかという部分をちゃんと時間をとって考え準備することなのです。

現場は監督の性格通り穏やかに、爽やかな風のように流れていきました。撮っている作品とは全く違う感じでみんなフレンドリーな現場です。「こういう風やってみようか」ってディスカッションしながら撮っていくのですが、本当にスムーズに進んで。あまりにスムーズすぎて、たまに怒って欲しい感があったりするくらいです(笑)」

最後に齋藤監督から、水害の被災地へのメッセージが語られた。

「この作品はすべて御殿場で撮影しました。その御殿場が先日の大雨でかなり甚大な被害を受けました。千葉も、足利も、僕ら日本の映像クルーにとって、その場所がなければ映像を作れないという地域が多大な被害を受けていることに対して、1日も早い復興を心より祈念しております」

◾︎作品への高い評価

アジア・太平洋地域16か国の中から優れたコンテンツを選出するAsian Academy Creative Awardsの各国代表作品が 10月15日(火)に発表された。

「フォークロア」からは日本代表に3部門、インドネシア代表に1部門が選出されている。各部門の大賞は12月6日(金)~7日(土)にシンガポールで開催の授賞式で発表される。

選出された代表は、こちら。

■日本「フォークロア:TATAMI」 主演男優賞:北村一輝 主演女優賞:神野三鈴 撮影賞:早坂伸
■インドネシア「フォークロア:母の愛」 オリジナル脚本賞:ジョコ・アンワル 

各部門大賞の発表を期待して待ちたい。

「フォークロア」シリーズ6作品は、11月10日(日)にBSスターチャンネルで一挙放送される。アジア各国の伝承から押し寄せる恐怖に浸ってみるのも楽しそうだ。

『フォークロア』シリーズ「TATAMI」『母の愛」他
BSスターチャンネル似て11月10日(日)より独占日本初放送!

(冨田格)