京都・清水寺にて「祈り」を伝え、未来へ繋ぐ試み。陶芸アーティスト 桑田卓郎氏の作品展を開催

人は何を求めて京都の寺院を訪ね、何を思うのだろう。

音羽山清水寺では8月25日まで、春秋の一般公開を除いては非公開の塔頭寺院「成就院」と「経堂」を会場に現代アートの展覧会を開催中。

Tea Bowl, 2017 © Takuro Kuwata, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA Photo by Kazuya Sudo

 

■桑田卓郎展「日々(にちにち)」

あらゆる垣根を越えた前衛的な表現を元に、人が一心に尽くし、無心へと近づいていくその瞬間を祈りの風景と重ね合わせ、100年先、1000年先の仏教寺院のあり方を模索していく「FEEL KIYOMIZUDERA」プロジェクト。

清水寺を舞台に2012年からスタートしたこの取り組みは、写真展、音楽イベントと回を重ね、今回は世界的に注目を集めるアーティスト桑田卓郎氏の作品展「日々(にちにち)」を開催。

清水寺 経堂 Photo by Kazuya Sudo

 

■極めて独特の表現がつくりだす視覚言語

桑田卓郎氏は、陶芸の伝統と向き合いながらも、目の前にある素材や時代、その時代の中に生きる自分自身と徹底的に対話することによって、常に革新的な作品を制作、発表してきた。

ビビッド、またメタリックな配色、そして一度見ると忘れられない、梅花皮(かいらぎ)や石爆(いしはぜ)といった陶芸の技術に基づきながらも、極めて独特の表現がつくりだす桑田氏の視覚言語は、世界各国で高く評価されている。

 

■「祈りのかたち」の共鳴

「制作するということは、今を生きているこの現実の中で、出会いや別れ、時に何もわからず衝動に駆られ無心になること、様々なことを感じた過程が形に現れて行く行為」。

桑田氏のこの言葉は、「FEEL KIYOMIZUDERA」プロジェクトが模索する、表現活動を通した「祈りのかたち」と共鳴する。それは、手を合わせる行為だけではなく、表現でも、仕事でも、遊びであっても、なにかに一心に尽くし、次第に無心へと研ぎ澄まされていくその過程こそが、仏教が理想とする「祈り」であるという考えだ。そして変化の激しいこの現代に何を表現し、どう生きるのか、ということに向かい合うことでもある。

■開催概要

展覧会名:桑田卓郎展「日々(にちにち)」

開催日時:2019年8月3日(土)~8月25日(日)/10:00~17:00(会期中無休)

会場:音羽山清水寺(経堂と成就院(じょうじゅいん)の2会場)京都市東山区清水1丁目294

観覧料:経堂無料/成就院は特別拝観料が別途必要(大人600円/小・中学生300円)

 

■桑田卓郎氏プロフィール

1981年広島県生まれ。2001年に京都嵯峨芸術大学短期大学部を卒業後、2002年に陶芸家の財満進氏に師事、2007年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了し、現在は岐阜県土岐市に工房を構えて制作。

日本国内のほか、ニューヨーク、ブリュッセル、ロンドンなど世界各地で展覧会を開催、また主なグループ展に「バブルラップ」(熊本市現代美術館、2018)、「村上隆のスーパーフラット現代陶芸考」(十和田市現代美術館、青森、2017)、「Japanese Kōgei | Future Forward」(the Museum of Arts and Design、ニューヨーク、2015)、「工芸未来派」(金沢21世紀美術館、2012)がある。

作品はルベル・コレクション、パームスプリングス美術館、金沢21世紀美術館、ミシガン大学美術館などに収蔵。2018年にはLOEWE Craft Prize2018の特別賞を受賞。

桑田卓郎ポートレート, 2019 Photo by Kazuya Sudo

 

京都・清水寺で自分の中の「祈り」を探ってみる旅はいかがだろう。

 

(MOCA.O)