ひきこもり経験を“アート作品”に。当事者が撮影した“部屋の写真集”

内閣府の調査によると、「ひきこもり」に近い層を親和群とし、その数を155万人と推計。社会問題化していると言われている。

そんな中、一石を投ずるに値する写真集と記念展が横浜で開催されることとなった。その名も「アイムヒアプロジェクト」。“僕は/わたしはここにいる”という意味だ。

©︎I’m here project 2018-2019

■「アイムヒア プロジェクト」とは
現代美術家・渡辺篤さんが中心となり、ひきこもりにまつわる問題に対し、新たな当事者発信の形を模索、当事者の尊重と社会への周知や問いを提示するプロジェクトである。

今回、ひきこもり当事者に自ら撮影した部屋写真をインターネットで募集したところ、約160枚の応募作品が集まった。そこでこれらをデザイナーや写真家らとの編集作業を経て写真集を出版、2月16日に発売。そして記念展「まなざし」を2019年2月16日(土)~ 24日(日)に開催することが決まった。

©︎I’m here project 2018-2019

渡辺さん自身も過去に、足掛け3年間の深刻なひきこもりを経験しているが、それを終える日に自身の姿や部屋を写真撮影したという。
”ひきこもった多くの時間は決して無駄な時間などではなく、 きっとこの「写真作品」を撮影するために必要な制作期間だったのだ” と、認識を切り替えて、美術家として社会復帰したのだ。

©︎I’m here project 2018-2019

■「アイムヒア プロジェクト」写真集出版 / 記念展「まなざし」について
<展覧会概要>
展覧会名:「アイムヒア プロジェクト」写真集出版記念展「まなざし」について”
会場:高架下スタジオSite-Aギャラリー(横浜市中区黄金町1-6番地先)
会期:2019年2月16日(土)- 24日(日) ※会期中無休
時間:11:00-19:00
入場料:無料 ※一部有料イベント有り

WEBサイト:https://www.iamhere-project.org(「アイムヒア プロジェクト」ウェブサイト)

©︎I’m here project/Atsushi Watanabe 2018-2019

©︎I’m here project/Atsushi Watanabe 2018-2019

©︎I’m here project/Atsushi Watanabe 2018-2019

このプロジェクトは、人生における困窮や自閉してしまった時間もまた、クリエイティブな価値になり得る事を示している。ぜひ、見に行ってはいかがだろう。

 

<会期中のイベント>

◎ゲストトーク②「社会包摂と表現について〜新人Hソケリッサ!の場合〜」
日時:2月23日(土)、18:00-(90分程度を予定)
ゲスト:アオキ裕キ氏(ダンサー・振付家) × 渡辺篤(アイムヒア プロジェクト代表)
入場料:1,000円
先着20名

※詳細はウェブサイトを。

 

<写真集>
タイトル:「 I’m here project 」
価格:1,000円(予定)

 

アイムヒア プロジェクト代表 渡辺 篤 | Atsushi Watanabe

Photo by Keisuke Inoue

【プロフィール】
現代美術家。1978年 神奈川県生まれ。
東京藝術大学在学中から、自身の経験を根幹とする、新興宗教・経済格差・ホームレス・アニマルライツ・精神疾患・セクシャルマイノリティなどの、社会からタブーや穢れとして扱われうる様々な問題や、それにまつわる状況を批評的に取り扱ってきた。
近年は、不可視の社会問題でもあり、また自身も元当事者である「ひきこもり」の経験を基点に、心の傷を持った者たちと協働するインターネットを介したプロジェクトを多数実施。
そこでは、当事者性と他者性、共感の可能性と不可能性、社会包摂の在り方についてなど、社会/文化/心理/福祉のテーマにも及ぶ取り組みを行う。社会問題に対してアートが物理的・精神的に介入し、解決に向けた直接的な作用を及ぼす可能性を追求している。
作品発表以外では、当事者経験や表現者としての視点を活かし、「ハートネットTV」(NHK Eテレ、2018年)などのテレビ出演や、雑誌・新聞・webにインタビューや執筆多数。
アートのみならず、医療や福祉のジャンルでの学会やシンポジウム登壇も行う。

 

今回のプロジェクトは、アーツコミッション・ヨコハマ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)は、「クリエイティブ・インクルージョン活動助成」を通じて、アーティスト、クリエーターによる創造性を活かした社会包摂を試みるプロジェクトを支援している。

 

(Y.FUKADA)