「栗きんとん」と聞くとお正月にいただく主にさつまいもを材料とした黄金色の栗金団(くりきんとん)を思い浮かべるだろうか。
おせちの栗きんとんとは別物の栗と砂糖だけを原料とした栗きんとんは岐阜県中津川が発祥の地。
昔から山の幸が豊富な中津川では秋には山栗を収穫して食べていたのが、やがて栗の実を細かく刻んで砂糖を加え、丸めて食べるようになったのが栗きんとんの始まりという。
茶巾絞りで栗の形を表した中津川の栗きんとんは粘りはなくほろりとほどける食感に栗の甘さが引き立つ素朴な秋から冬期限定の和菓子。
明治の中頃に商品化され中津川土産として知られるようになった。
中津川には数多くの栗きんとんを販売する店がある。仁太郎、満天星一休、梅園、恵那福堂、川上屋、栗菓匠七福、ヤマツ食品、松葉、しん、すや、信玄堂、新杵堂、松月堂、美濃屋の14店舗。
それぞれに微妙に異なる味わいなので食べ比べも楽しい。
中津川へ出向いた際、元禄年間創業の「すや」の本店に立ち寄る。
元々は木曽路の入口の宿場町で「十八屋」の屋号の酢を売る店だったそう。「すや」は「酢屋」が転じての店名らしい。
悠久の時代を感じる店構えの引き戸を開けて店内に入ると天井に荒々しい削りの太い梁、照明は手元が困らない程度の薄明りが店の雰囲気を遠い過去へと繋げているよう。
昔懐かしいショーケースに羊羹などとともに栗きんとんの包みがずらりと並ぶ。
すや本店ではイートインスペースもあり店内でいただくのも格別の風情が感じられるだろう。
本店には駐車スペースがないので車で赴いた場合はすや本店から少し離れたところの駐車場を設けた「すや西木」が便利。
隣接した甘味処「榧(かや)」では栗きんとんのほか、栗しるこ、ぜんざい、そばがき、豆かんてん、あんみつなどがいただける。
【すや本店】
住所:岐阜県中津川市新町2-40
【すや西木・甘味処 榧】
住所:岐阜県中津川市中津川1296-1
すや 公式サイト:https://www.suya-honke.co.jp/
(小椚萌香)