CDの可能性がまだあることに気づかされる
オーディオは、長らくスピーカーが音の傾向の大半を決めると言われてきた。確かに音の出口となるスピーカーの品質は重要。しかし、音楽の源流となる音源、上流のプレーヤーの品質をないがしろにしていいわけではない。
AK500Nの音はそれだけ鮮烈な印象を受けた。特にCDの再生品質に驚いた。44.1kHz/16bitの音源にこれだけ多くの音数が入っていただなんて…と素直に驚いた。
CDを挿入するとAK500Nはいったん楽曲のリッピングを行い、PCMデータとして内蔵SSDに保存する(楽曲名などはオンライン上のCompact Disc DataBaseで参照し、自動的にインポートする)。その上で、 PCMデータとして再生を行なう。
CDに感じていた響きの堅さが馴染み、音圧の強い音色に隠れていた微細音が色鮮やかに浮かび上がってくる。ボーカルは眼前に、ギターなどのバッキングがその左右に立ち、リズムセクションが背後を固める。ステージ上のアーティストの位置関係が立体的に再現される。
誤解を恐れずに言えば、キックドラムのようなアタックの強い音が入ると響きが薄れるトラックも如実に見えてきた。これはダイナミックレンジの狭いレコーディング機材で録ったトラックで起こる現象だが、レコーディングスタジオではなくいち家庭でここまで赤裸々に判別できるシステムが作れるとは。
録音の良し悪しがわかるプレーヤーということは、良質なトラックはより音楽性を高めることができるということ。今までにコレクションしたCDとの対話がもっと楽しくなるということを意味している。これは面白い。手持ちのすべてのCDをAK500Nで聴きたくなってくる。
バッテリー駆動のノートパソコン、リッピング時のエラーレートが低いドライブ、CDの読込速度をコントロールして精度を高められるリッピングソフト、リアルタイムDSD変換が可能なUSB DACなどの組み合わせで、AK500Nに近しいプレーヤーシステムは作れるかもしれないが、オールインワンでここまでのクオリティを叩き出すのは難しいだろう。
ホームオーディオ、ラウンジオーディオのリファレンスとして、AK500Nに169万円の価値は確かにあると断言できる。
(武者良太)
*前編:160万円の音楽プレーヤー「AK500N」が発売へ… その妥協なき音へのこだわりとは
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写真:プレスサイト・筆者撮影
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