グッドデザイン賞2014の大賞候補9件は「+α」がキーワード

毎年話題となるグッドデザイン賞の2014年大賞候補が発表されました。今回、大賞候補となった9つのモノに共通するキーワードは“+α”です。既にあるものに“一工夫”加えたものが、大賞候補に選ばれています。

では、そんなグッドデザイン賞の大賞候補に選ばれた9つのモノを紹介したいと思います。

 

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■4K超短焦点プロジェクター / ソニー株式会社

14G050384_02_880x660最大147インチの大画面映像を壁に投影できるプロジェクター。特殊な工事も必要なく、壁際に設置するだけで臨場感のある大画面映像を楽しむことができます。水平と垂直を基調とした本体デザインは、シンプルでインテリアに違和感なく溶け込めるデザインに。超短焦点レンズを駆使したプロジェクターは、各動作の滑らかさや、インテリアに馴染むフォルムなど、各所における高い完成度が評価されました。

■デジタルカメラ dp Quattro / 株式会社シグマ

dp_quatro現在発売されているデジタルカメラの多くは、片手で扱えて、簡単に写真を撮ることができるものばかりです。ですが、このdp Quattroは、デジタルカメラでありながら、画質を引き出すのは人の技術であるという正統派のカメラになっています。バッテリー兼グリップを右手で持ち、レンズ鏡筒に左手を添えるという、今までのデジタルカメラにはない独自のフォルムが評価されました。このフォルムであることで生まれた液晶画面やインターフェースの見易さにも評価が集まっています。

■ダイニングチェア KISARAGI / 飛騨産業株式会社

14G060430_01_880x660世界で初めて杉圧縮柾目材を圧要したダイニングチェアです。日本の固有種である杉は、家具用途に耐えられるだけの強度がありませんでしたが、圧縮技術で家具に耐えられるだけの強度を得ることに成功しました。杉ならではの木目を生かすために、杉圧縮柾目材を開発し、美観や強度、掛け心地に優れたダイニングチェアになっています。デザイン性や美しさなど、日本の木工技術の高さが評価されたのです。

■産業用ロボット 医療医薬用ロボット VS050 SⅡ / 株式会社デンソーウェーブ

14G070580_01_880x660この製品は、クリーンルームなどの滅菌環境下での作業を想定して作られています。その特殊な環境化に対応するため、防滴やクリーン技術にプラスする形で、滅菌洗浄に耐性のある表面処理が施されています。あらゆる溝や穴を埋めて、製品表面の滑らかな形状など、段差や隙間もなくなっています。衛生上の要求を満たして、未来的な存在感を備えているデザインが評価されました。

■電動アシスト車椅子 JWスウィング / ヤマハ発動機株式会社

14G090723_02_880x660軽量でコンパクトな電動アシスト車椅子は、専用ソフトによって使用者の身体状況や使用環境に合わせてアシスト力を設定することができます。電動アシスト自転車での実績を活かし、自分で漕いだり、どこにでも行けるという喜びを提供しています。屋外などでは介助者の力を借りることが多い車椅子利用者であっても、自分の力で何でもできるという喜びがあります。全電動ではなく、自分の力のアシストをしてくれる車椅子という点が評価されました。

■商業施設 マーチエキュート神田万世橋 / 株式会社JRステーションリテイリング

14G110916_01_880x660マーチエキュート神田万世橋は中央線の紀州店として開業した旧万世橋駅の鉄道遺構をリノベーションした商業施設です。2013年に蘇ったこの施設は、文化人が集うサロンをイメージして文化や情報を発信する拠点となっています。既存のものにはできるだけ手をくわえず、空間資源を適切に用いたデザインはとても魅力的です。市民からの好感度の高さも評価のポイントでした。

秋田駅西口に作られたバスターミナルは、秋田杉をふんだんに使った木造バスターミナルです。お客様をおもてなしする空間として、秋田駅前の景観向上にも貢献しています。木質による温かさと風合いが、“使ってみたくなる”バス停として評価されました。これまであったバス停とは一線を画すデザインが選ばれた理由になっているのです。

■無印良品 Found MUJIの活動 / 株式会社良品計画

14G141138_02_880x660Found MIJIはスタッフが世界中に足を運び、無印良品の価値観の下で様々な日用品を探し出す活動です。その商品は限られた店舗でのみ販売がされ、リサーチ結果は商品の開発に活用されています。現在、日本のモノづくりは、見つけることの大切さに回帰しています。成熟した現代のモノづくりでは、改めて良品とは何かを問いかける無印良品の姿勢が評価されたのです。

■月刊誌 東北食べる通信 / NPO法人東北開墾

14G141148_01_880x660『東北食べる通信』は、地方の生産者と都市の消費者の間をつなぐための、世界で始めての食べる月間情報誌です。東北の生産者をクローズアップし、付録として実際に作られた食べ物を会員宅に届けています。食べる通信をきっかけにした、生産者と消費者のコミュニケーションも活発化しています。情報と食が繋がることで、食べるという行為に更なる付加価値が生み出されている点が評価されました。

これまであったものに、プラスの価値をつけたもの。それが、現代の日本におけるモノづくりの大切さなのではないでしょうか。今回、グッドデザイン賞の大賞候補となった9つのモノには、そんなプラスの価値があるのです。

(月野透子)