ポルシェ研究開発センターに新施設建設 ― 機能性だけでなく環境に配慮

ポルシェAGのヴァイザッハの研究開発センターは、その設備をより充実するべく施設の建設が進めている。計画の中にある、新たなデザインスタジオと風洞設備、そしてエレクトロニクスインテグレーションセンターは、もう間もなく稼働を開始する段階だ。さらに10月までには高層の大型駐車場が完成する。これらの設備計画の中で、2016年の完成を向けて進められている大がかりな施設がある。
70726f647563742この施設は、新しい駆動システムテスト用のもので、合計18台ものテストベンチが設置される。ここでは、新しいハイブリッド駆動システム、新しいエンジン、および新しい電気モーターの開発が進められるという。この設備が完成するこの2年以内に600名が仮設を含む現在の職場から、この新しい複合ビルへと移動を行うという。

すべての建物はポルシェの原則に従って効果的に開発と工程を連動すべく、開発センター敷地内に設置されている。テストベンチ、ワークショップ、およびオフィススペースは、全てワンフロアに収められており、将来、パワーユニットとギアボックスも隣接する組み立て工場から最短経路でテストベンチの上に運ぶことができることが実現することになる。これにより、すべての工程が同じフロアでの作業となるため、これまでのように外部のテスト施設を利用する必要がなくなるため、無駄な時間を省くことができるのが大きなメリットだ。
porsche_f1現在建設中の新施設の基礎を作るために7台の掘削機が250,000m3もの敷地を掘り出しているが、岩の3分の1は現地の砕石機で砕かれ、後に施設の建材として再利用する。環境への影響をできるだけ抑えるために、残りの石も大部分が近くの石切場に持ち込むという。掘削された素材の大半は、隣接する土地に環境負荷の少ない方法で一時的に保管された後、周辺エリアの石切場に運搬されるが、一回の運搬量を抑えるなど工夫を行うことにより、周辺の道路交通に与える影響はほとんどないとしている。

約6,000m2の面積の建物は、周辺の景観に自然に溶け込むようにデザインされており、7階のうち2階までが、現在の土地の位置より低くされている。建物後部は斜面になんと18mの深さまで潜り込む設計だ。この建築方法には、コンクリートで固める表面積をできるだけ小さくし、建設用地を最大限に使用することにある。駆動システムのテスト用施設の総床面積は32,000 m2を超え、それにもかかわらず7階建ての建物は開発センターの最高地点を大きく上回ることがないように計画されている。外壁にはダークカラーの外装材が使用され、明確なコントラストを生み出さずに背後の森の端部と違和感なく目に映るように工夫されている。
porsche_f2建設前、約2haの隣接する森林地帯を取り除かなければならなかったが、その際、木々は伐採せずに、近隣地に移植をおこなったという。もちろん移植に必要な作業は、事前に当局の正当な承認を得て行われ、最新の環境保全に関する研究結果に準拠させ、行われた。さらに新しい駆動システムテスト用施設の屋根は、可能な限りの植物と草で覆うことで、自然との調和が図られる予定だ。

建設が行われているヴァイザッハ研究開発センターは、水保護区域に属しており、全ての建築工事は常に慎重に進められている。新しい駆動システムテスト用施設の建物もこの範囲内で、例として雨水の大半は専用の帯水層を通して地下水に戻るシステムが導入されている。これらの対策は周辺の地下水の改善を保証するためのもので、下層土には新たな施設が建築される以前と同じ状態で雨水を流すことを目的としている。そのため駆動システムのテスト用施設には水質を変える亜鉛製の排水路は一切使用されていない。

新しい駆動システムテスト用施設が自然を扱う思慮深いシステムは、最終的には職場としての魅力をさらに増すこととポルシは考えている。これはヴァイザッハ研究開発センターが実現する多彩な未来の側面のひとつといえるだろう。

ポルシェジャパン