河出書房新社は、堀江敏幸氏訳『土左日記』を、河出文庫の新刊として7月8日(月)に発売した。
同書は『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』収録作品として、2016年1月に刊行した『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』の巻を作品別に文庫化したもので、芥川賞作家の堀江氏が『土左日記』を試みに満ちた現代語訳で綴っている。
芥川賞作家・堀江敏幸氏による『土左日記』
2001年『熊の敷石』で、芥川賞を受賞した堀江敏幸(ほりえ としゆき)氏。
1964年に岐阜県に生まれた堀江氏は、1999年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2003年『スタンス・ドット』で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞・木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞など、数々の受賞歴を持つ作家だ。
そんな堀江氏が、紀貫之(きのつらゆき)によって書かれた日本最古の日記文学の現代語訳に挑んだ。「船が揺れ、貫之も揺れ、語り手が揺れて、私もまだ揺れている。」と述べる堀江氏。いま読んでおきたい、古典文学の一冊がついに文庫化された。
堀江氏の解釈による緒言と結言で作品への理解が深まる
「をとこもすなる日記といふものををんなもしてみむとてするなり」
『土左日記』は、平安時代前期から中期にかけて活躍した歌人・紀貫之によって書かれた日記文学だ。
土佐国司の任を終えて、京の自邸に戻るまでの55日間の船旅の経験をもとに仮名文字で書かれ、後の女流文学にも大きな影響を与えたといわれている。
同書は、『古今和歌集』の中心選者として知られる貫之が書いた文学作品で、中学・高校の学生時代に、教科書で習った人も多いことだろう。
その『土左日記』を、芥川賞作家・堀江敏幸氏が試みに満ちた現代語訳を行う。堀江氏訳『土左日記』では、日記の現代語訳に加え、『土左日記』を起草するまでの貫之の境遇と、筆をおいたあとの心境を理解するため、訳者によって書かれた「貫之による緒言」と「結言」を収録した。
貫之の生涯に添い、自問の声を聞き、その内面を想像して用意されたテクストによって、作品への理解がいっそう深まるに違いない。
大河ドラマの主人公に紫式部がなるなど、平安文学ブームといわれる今、押さえておきたい日記文学である『土左日記』。堀江氏の現代語訳による、虚実のあわいで綴られる55日間の船の旅を楽しんでみては。
河出文庫・古典新訳コレクション 土左日記
著者:紀貫
訳:堀江敏幸
解題:西山秀人
仕様:文庫版/並製/160ページ
価格:660円(税込)
公式サイト:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309421186/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000688.000012754.html
(高野晃彰)