深田隆之監督作品の映画『ある惑星の散文』が、6月4日(土)の池袋シネマ・ロサでの単独レイトショーを皮切りに、順次、劇場にて公開される。
今回、ポスタービジュアル、予告編が解禁となり、諏訪敦彦氏、濱口竜介氏、井口奈己氏といった世界で評価される監督陣もコメントを発表。本記事では、そんな同作品の魅力について語りたい。
人生の岐路に立つ女性2人が織りなす、ささやかな物語
脚本家を目指すルイは、海外に行っている映画監督の恋人アツシの帰りを待っている。スカイプ越しに会話を交わす2人は、新しい生活への計画に胸を躍らせる。一方、芽衣子は精神疾患によって舞台俳優の活動を離れカフェで働いていた。そこへ急に兄のマコトがやってくるが…。
女性2人を廻り、ストーリーが展開する『ある惑星の散文』。メガホンをとったのは、本作が初の劇場公開作となる深田隆之監督だ。今回の情報解禁に合わせ、『風の電話』などを手掛ける諏訪敦彦監督は次のようにコメント。
「居場所を失い、この世界から忘れられてしまう不安を抱えて、ふたりは惑星のように物語を彷徨う。しかし、その感情は安易なドラマに飲み込まれることなく、ひとつの光学装置となって世界へと折り返される。
その無垢なる視線が発見するのは純粋な体験としての世界の光景=映画なのだ」
公式HPでは、この他、複数の監督や関係者が作品についてコメントしている。
横浜のロケーションからシナリオを発想させた映画
本作の撮影は横浜・本牧エリアで行われた。本牧はかつて、アメリカ軍の文化を吸収し、その音楽文化を世に広めた発信地だった。
現在は、鉄道計画の頓挫により、当時、開発された巨大な建物が多く残ったままとなっている。接収されていた痕跡も今はほとんど見えなくなり、“陸の孤島”と呼ばれるほどアクセスも悪くなってしまったこの土地だが、そこには歴史の地層とも呼べる複雑な魅力がある。
『ある惑星の散文』の登場人物たちは様々な不安を抱える人間たち。恋人との新たな生活が始まらない、自分自身は忘れられるかもしれない、そんな不安と本牧という土地が持つ時間の地層が呼応し合う。
終盤、映画館のシーンで芽衣子はささやかな生きる希望を見出す。このシーンはまさに、本牧のがらんどうになった映画館から発想を得たもの。
本牧という土地から着想を得たストーリーにも注目したい。
ある惑星の散文
出演:富岡英里子、中川ゆかり、ジントク、渡邊りょう、鬼松功、伊佐千明、矢島康美、水越朋(声)
[撮影]山田遼、[録音]渡部雅人、[脚本]深田隆之、島田雄史、[助監督]島田雄史、[宣伝イラスト]坂内拓
[宣伝デザイン]大澤悠大
製作:√CINEMA
日本/2018/98分/カラー/16:9/ステレオ/DCP
公式HP:https://www.forgotten-planets.com/
予告編:https://youtu.be/MXTm7Dg-xYg
(IKKI)