ポール・スミスは2022年秋冬コレクションで、アートハウス映画の豊かな世界を探求し、映画界の巨匠たちのユニークな美の表現テクニックにスポットライトを当てている。
贅沢な質感や映画のようなパレット、別世界を思わせるようなフォトグラフィックプリントを融合することで、コレクションは自信に満ちた新しいルックを打ち出した。
華麗で幾層にも重なった色彩を提案
1930年代から60年代にかけてのセピア色やモノクローム映画から、カラー映画の到来と目覚ましいニューシネマの手法の出現を経て、コレクションのカラーパレットは氷のようなニュートラルカラーから、鮮やかなグリーン、ブルー、レッドまで、華麗で幾層にも重なった色彩を提案。
ポール・スミスの長年のシグネチャーであるフォトグラフィックプリントは、ヴィンテージ映画のポスターや、古い映画館のインテリアを思わせる質感で、際立って鮮やか。
うっとりとさせるようなスターレットプリントは、ハリウッド黄金時代を彩る銀幕スターたちのスタジオでの顔写真にインスピレーションを受けており、映画のスタイルの変遷を映し出すかのように3つの異なるトーンで表現されている。
サイケデリックなジグザグプリントは、デヴィッド・リンチやウォン・カーウァイといった偉大なシュールレアリストやアバンギャルドな映画監督らへのオマージュとなっており、コレクションに大胆なグラフィック要素を加えている。
デヴィッド・ボウイの粋なルックを彷彿
秋冬素材の伝統的なチェック柄も、今シーズンは重要な役割を担っている。
アウターウェアやテーラリング、カジュアルウェアを通してミックス、マッチ、クラッシュできるようにデザインされており、ツイードや、ウール、ドリルなどの素材で展開。
そしてルーズフィットな格子縞のカーゴパンツとのコーディネートなどに、テーラリングとスポーツウェアの融合が表現されている。
ショーのスタイリングは、『地球に落ちて来た男』のデヴィッド・ボウイの粋なルックや、ハリー・ディーン・スタントンを一躍有名にした『パリ、テキサス』など、視聴者を別世界へと誘う映画たちからインスピレーションを得ており、プリントの幻覚的な感覚をより一層強調。
パリのフリードランド通りにあるイル・ド・フランス地方商工会議所本部で行われたショーは、ポールの親友でエミー賞受賞作曲家のリチャード・ハートリーが『ツイン・ピークス』『ビューティフル・デイ』(*)『インヒアレント・ヴァイス』などのムードあるサウンドトラックをインスピレーションに、ショーのために特別に作曲した楽曲とともに発表された。
https://youtu.be/IIdvWXm-QVg
ポール・スミス公式サイト:https://www.paulsmith.co.jp/stories/aw22/mens-show
(Yuko Ogawa)
* 原題は『You Were Never Really Here』